『怪獣8号』実写的演出となった“アニオリ描写” 制作陣の気概を感じられる出来栄えに
レノの言葉をきっかけに日本防衛隊を目指すことに決めたカフカ
そんな怪獣を討伐しているのが日本防衛隊と呼ばれる精鋭部隊。現実世界に即すのであれば自衛隊が近いだろうか。主人公のカフカはそんな日本防衛隊に夢見ながらも、試験で不合格となり夢破れてしまい、怪獣専門清掃業で働いていた。怪獣を見事討伐した日本防衛隊は人々から称賛され、怪獣の死骸を清掃するカフカたちは日の光を浴びることはない。カフカのナレーションからは自分の仕事に誇りを感じているようにも思えるが、幼なじみであり日本防衛隊第3部隊長として活躍している亜白ミナには負い目を感じていた。「なんでこっち側にいるんだろ俺……」と頭を抱えるカフカは、まだ日本防衛隊への夢を諦めきれずにいた。 翌日、怪獣専門清掃業者にやってきたのが市川レノだ。防衛隊志望で、試験対策の一環として怪獣専門清掃業者でバイトを始めたレノは、カフカに対して「なんで諦めちゃったんすか?」と核心的な疑問を投げかける。最初はピリついた雰囲気が漂っていた2人だったが、誰もがやりたがらない腸の清掃作業を通して、仲を深めていく。腸の清掃で匂いに敏感になってしまったレノに、カフカが鼻栓を無理やり装着しようとするシーンが微笑ましい。 だが、そんな日常のひとときも余獣の存在で一気に地獄へと変わる。余獣がレノを食べようとしたところを、カフカが間一髪で救出。カフカはレノを逃がし、一人で余獣と退治するが当然敵わない。そこで、カフカはミナと一緒に日本防衛隊を夢見た過去を思い出し、これまでの選択を後悔する。レノの助太刀もむなしく、日本防衛隊によって救出された2人。だが、カフカにとってレノとの出会いは大きな転機となった。 レノの言葉をきっかけに日本防衛隊を目指すことに決めたカフカだったが、病床で休んでいたところに小さな怪獣が口の中に侵入し、怪獣に変身する能力が身についてしまう。なぜ怪獣はカフカに寄生したのか、そしてなぜ怪獣に変身する能力を得たのかといった事実はこれから明かされていくことだろうが、第1話のオチとしては完璧だったと評価できる。
川崎龍也