競輪元GPレーサーが解説 安定感アップした吉田拓矢、欠場明け4場所目は真価問われる一戦に
元グランプリレーサーで競輪評論家の加藤慎平さんが、ビッグやグレードレースで推したい注目選手を紹介。競走データからは見えてこない選手の特徴を解説します。今回は25日から28日までいわき平競輪で開催される「いわき金杯争奪戦(GIII)」に出場する吉田拓矢選手です。
4日間ラインの先頭を任されるのはほぼ確実
今回紹介するのは、茨城・107期の吉田拓矢選手だ。昨年8月のオールスター競輪での失格斡旋停止から今開催がペナルティ欠場明けから4場所目となる。 脚質自在として定評のある吉田選手だが、復帰明けからちよっとした変化を遂げている。以前に比べて、格段に“前へ前への姿勢”が強く見られ、逃げ先行の自在選手に近づいているのだ。 もともと吉田選手は、自力もこなせる実力はあるものの横の強さや位置取りが一歩劣る。それゆえに総合力でうまくカバーし、結果的に自在として立ち回っていた印象だ。 しかし復帰明けは、どんな展開でも前へ前へと進み、とにかく仕掛けのタイミングが早い。時にライバル選手に出られても簡単には譲らない。これまでは位置取りに失敗する局面も見られたが、いまの吉田選手は迷いがまったくなく、上位戦では気後れしていた位置取りなどのデメリットもカバーされている。 この進化を体現しているのが、復帰後3場所だ。復帰初戦の九十九島賞争奪戦(GIII)は押圧による失格はあったものの、それ以外の出場した8レースで連対を外していない。F1クラスとはいえ、安定感抜群で、どっしりとレースに挑んでいる。 成長の背景にあるのは、やはりオールスター競輪での失格だろう。若手ホープである吉田選手にとって、重要な時期に約4カ月の出場停止はかなり堪える。ただそこで腐るのではなく、悔しさをバネに「自力先行の直球勝負を貫こう」と腹を括ったことで、一皮剥けつつある。 松浦悠士・古性優作・眞杉匠選手を見てもわかるように、いまの競輪界のトップは“自力ベースで自在もできる”タイプが多い。吉田選手も今後そのような選手に近づいていくのではないだろうか。 今開催のいわき金杯争奪戦は真価が問われる一戦となる。S班が5人出走と強力なメンバーが揃った中で、吉田選手の関東地区は、S1はわずか4人。南関東地区まで広げて見ても8人と層の薄さは否めない。眞杉選手や坂井洋選手が不在のなか、4日間ラインの先頭を任されるのはほぼ確実。そこでS班に喰い付いていけるか注目だ。 ちなみに車券は、2~3着付けがオススメだ。前述のように「先行も辞さず」と言うレースが増えているだけに番手がやはり有利。そして人気薄となった局面では紐に入れておくのが吉だろう。 ■吉田拓矢選手3行メモ ・総合力の高さがウリの自在型 ・ヨコの動きやポジショニングに課題あり ・決場明け以降、前へのこだわりが見られる