「山の日」で考えたい 都も検討 自治体創設相次ぐ“森林環境税”という増税
ことし5月31日、安倍晋三首相が消費税率を10%に引き上げる時期を2019年10月へと先送りすることを表明しました。消費税は生活に直結するだけに、それらをめぐる議論は注目されがちです。しかし、私たち国民が納めている税金は消費税だけではありません。ほかにも、さまざまな税金があります。消費税議論の裏では、新しく創設される税金もあります。近年、注目されているのが森林環境税です。 国内初の森林環境税を導入したのは高知県で、平成15(2003)年のことでした。森林環境税とは、森林の保全や林業の振興を目的にした税金です。高知県の場合、森林環境税は年額500円を上乗せする形で徴収しています。その後、ほかの自治体でも森林環境税の導入が相次ぎました。本年度には、京都府と大阪府でも創設され、京都府では府民税に年額600円を、大阪府では府民税に年額300円を上乗せしています。高知県の創設から13年、2016(平成28)年4月1日時点で、森林環境税を創設している自治体は37府県にも増えています。 首都・東京は森林環境税をいまだ導入していませんが、導入に向けて模索する動きはあるようです。今後も森林環境税は拡大することが予測される森林環境税ですが、ここまで急拡大した背景には、どういった事情があるのでしょうか?
林業経営成り立たなくなった高知県が皮切り
「高知県は、森林が県土面積の多くを占める森林県です。しかし、外材が大量に輸入されるようになって森林価格が下落するなど、県内の林業経営は成り立たなくなったことが背景にあります」と、林野庁林政部企画課は説明します。 「林業経営者が減少すると、山林は放置されるようになり、山々は荒廃してしまいます。適正に山の管理がなされていないと、土砂崩れが起きやすくなるのです。また、山林や森林は水質保全の機能も有しています。私たちの水道水を確保する上でも重要な資源です。そうした森林を守るために、高知県は森林環境税を導入しました。ほかの地方自治体でも、事情はほとんど同じです。そうしたことから、森林環境税の創設が相次いでいるのです。」(同) 2015(平成27)年度の森林環境税は、予算ベースで207億円の税収が見込まれていました。人口の多い神奈川県では、30億円超もの税収になります。森林環境税による徴税額は、決して小さな額ではありません。また、埼玉県は森林環境税を創設していませんが、自動車税収の一部を森林保護のために割り当てています。これも、形を変えた森林環境税です。