豚骨ベースなのにあっさり! ラーメン通が一番好きな「ご当地ラーメン」の名店[FRaU]
食のスペシャリスト&グルメに精通する識者で構成される「FRaU Foodies」が、今イチオシの料理やスイーツなどをお届けします。年間600杯以上のラーメンを食べている森本聡子さんが、数あるご当地ラーメンでも印象に残っている“佐賀ラーメン”をレコメンド。特にお気に入りの店を紹介します。
豚骨ベースでも胃もたれしない あっさり味が自慢のラーメン
「日本全国をまわる中で印象に残っているご当地ラーメンを聞かれることが多々あり、その度に答えているのが“佐賀ラーメン”です」 森本さんがハマったきっかけは、日本全国の有名ラーメン店主も足を運ぶお店として知られている「佐賀ラーメン いちげん。」で食べたこと。 「ハマりにハマった」という佐賀ラーメンの魅力を「何と言ってもミルキーな豚骨スープであること。シルクのような美しさがありながら、旨味はしっかり。それにトッピングの“生卵と佐賀海苔”がよく合うんです」と言います。 その「いちげん。」より長い歴史を誇る“佐賀ラーメン”の店があります。それが森本さんオススメの「駅前ビッグワン」。佐賀駅から徒歩3秒(森本さん談)の場所に位置する文字通りの駅前店です。
現店主・野田光基さんの父が、駅前のビルでゲームセンターを営んでいました。ある日、隣のビルが建つと知ったとき、商売敵が入る前にと物件を確保。駅周辺になかったというラーメン屋をオープンしました。今から41年前、1983(昭和58)年のことでした。 お父さんはゲームセンターの仕事があるため、奥様が店を任されることに。ラーメン屋を営んでいた料理人にイチから教わり、ラーメン作りを習得しました。店のオープン後間もなく、お父さんは他界。野田さんは、高校入学時から休日にはお母さんからラーメン作りを習い、卒業と同時に店に立つようになり、今に至ります。 最初は要領をつかめず四苦八苦。「昔と同じ味だね」と言われることで日々成長を感じていたそうです。 森本さんが「ビッグワン」に出合ったのは、そこから10分ほど離れた「成竜軒 大財店」でチャンポンを食べていたとき。カウンター横に座っていたお客さんと話したことがきっかけでした。 どこから来たのか聞かれ、東京から来たことを話した森本さんは、「佐賀のラーメンには生卵が乗っていて最高ですよね」と話します。すると、「ラーメンを生卵にのせるのは佐賀と徳島だけど、どっちが日本で最初に乗せたのか?みたいな取材がうちに来てさー」と、お客さんが放ったあるフレーズに疑問を持ちます。 「え?取材ですか?」と聞く森本さんに、お客さんは自分もラーメン屋であることを伝えたのです。どこにあるのか聞いても「俺のお店の話はいいんだよ」と言い、その場を去りました。 「帰宅後、『成竜軒』の大将が『あの人は駅前にあるビッグワンの息子さんだよ! よかったら明日行ってあげてね』と、お互いに小粋な心配りを見せてくれたのです。やさしき佐賀県民の粋な計らいに胸がキュンとなった私は、もちろん足を運びました」