生成AIは漫画家の仕事を奪うか? プロのイラストレーターがあえて「水彩」の練習に励む納得の理由
急激に需要が高まるアナログイラスト
デジタルの技術が飽和状態になり、生成AIの進化によってきれいなイラストが無料で簡単に手に入るようになった影響で、ここ数年、アナログイラストの再評価が急速に進んでいる。アナログで描かれた漫画家の原画展が毎月のように開催されていることからも、その注目度の高さがわかるだろう。 古書店大手の「まんだらけ」が主催するオークションには、海外勢も参加するようになり、ここ数年で落札価格が急激に上昇しつつある。コレクターが求めているのは生成AIで出力されたイラストではなく、アナログの直筆一点物だ。プロのイラストレーターに対価を払い、手描きのイラストを描いてもらうコミッションイベントでも、熱心な愛好家が数万円という金額でイラストを注文し、会場のオークションで高額で競り落としていく場面があった。 人気YouTuberで「ポケモンカード」のイラストを手掛けているさいとうなおき氏も、最近、アナログイラストの制作を始めた。アナログに活路を見出し、水面下で動き出しているイラストレーターは少なくないようだ。「生成AIに反対するのも結構だけれど、その合間でもいいから、とにかく若いイラストレーターはアナログを練習したほうがいい」と、C氏は話す。 「生成AIなんて大したことないから、本来なら全無視でいいんですよ。それよりも、アナログが上手い同業者をライバル視したほうがいい。若いイラストレーターは戦う相手を間違っちゃダメなのです。アナログの実力で競う感じになったら、僕は大歓迎ですよ。本来の絵の実力で勝負できると思っているからね」
ライター・山内貴範 デイリー新潮編集部
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