両軍あわせて22トライの乱打戦を考察 アタックに見応えがあったのは確かだが…ラグビーの魅力はそこだけではない
◇コラム「大友信彦のもっとラグビー」 珍しい試合に立ち会った。20日、太田市運動公園陸上競技場で行われた関東大学ラグビーリーグ戦の流通経大―日大は、流通経大12、日大は10、あわせて22トライを取り合う乱打戦。流通経大はハーフタイムをはさみ9連続トライ。日大は最大47点差をつけられてから5連続トライを返し最、後は14点差まで追い上げた。最終スコアは78―64で流通経大が勝利した。得点は両チームあわせて142点。およそ3分40秒に1トライが生まれた計算で、キックオフからのノーホイッスルトライが5回もあった。 しかし、64点取られて勝つ、あるいは64点取って負けるとは記憶にない。そこで調べてみた。 ラグビーで大量点が増え出したのは1992年にトライが4点から5点に引き上げられてから。東西主要リーグと全国大会の記録を調べたところこれまでの「勝ちチームの最多失点(負けチームの最多得点)」は、2001年度大学選手権2回戦、早大―大体大で「58―54」だった。就任1年目の早大・清宮克幸監督が「なめてました」と発言して物議をかもした…といえば思い出すファンもいるかもしれない(実際のコメントは「ちょっとなめすぎでした。僕も反省しています」という、清宮流の愛情を込めたものだったのだが)。
負けチームの得点が50点以上の試合は他に92年の三菱自動車京都55―50NTT関西、95年の大経大53―52龍谷大、96年の大東大54―50東海大と3例あったがすべて90年代のもの。今回は23年ぶりの記録更新だった。 そして意外だったのは今回、両チームの監督コメントが思いのほかポジティブだったことだ。 敗れた日大の窪田幸一郎監督は「大味な試合になってしまった。苦しいときに我慢できない。ただ、諦めずに反撃したのは収穫。これを早く出せるようにしたい」。勝った流通経大の池英基監督は「途中で勢いが止まったのは非常に良い課題。DFの問題だけでなく、アタックを80分続けることが大事だと思う」とコメント。2人とも、意識して前向きに発言しているように見えた。 両校のアタックに見応えがあったのは確か。流通経大のナンバー8ティシレリ・ロケティ(3年)、FB中村楓馬(4年)、日大のWTB筒井晴太郎(2年)、CTB後藤翔大(2年)のランニングは将来が楽しみだ。 とはいえラグビーの魅力がタックルそしてディフェンスにあることも事実だ。両校の選手には監督の優しい言葉に安住せず、ここからの進化を期待したい。 ▼大友信彦 スポーツライター、1987年から東京中日スポーツ・中日スポーツでラグビーを担当。W杯は91年の第2回大会から8大会連続取材中。著書に「エディー・ジョーンズの監督学」「釜石の夢~被災地でワールドカップを」「オールブラックスが強い理由」「勇気と献身」など。
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