映画『かくしごと』は、何を秘めているのか?──杏主演で6月7日劇場公開
誘拐犯に育てられた子どもを描いた作品には『八日目の蝉』や『ブリグズビー・ベア』などがあり、実親の虐待から救おうと誘拐する作品といえば、ドラマ「Mother」が思い浮かぶ。『万引き家族』にも、その要素はあるかもしれない。 杏が『かくしごと』に寄せた「千紗子の行動は果たして良いことなのか、悪いことなのか」の言葉に象徴されるように、一概に善悪で断ずることは難しい。そして本作が、善悪だけを伝えたかったのか?と問われれば、当然疑問符が付く。物語の構造から考えても、それでは説明が足りない。 『かくしごと』というタイトルが示しているのは、何か──。千紗子の秘密が徐々につまびらかになっていくだけでなく、彼女以外の関係者それぞれの“かくしごと”も判明していく。杏、中須、奥田ほか出演陣の力演も相まって、「嘘をついた女性の物語」は、登場人物がみな生々しい“何か”を抱えた群像劇へと変化していく。 『かくしごと』は、旧態依然とした「母性」をめぐるレールに乗ったように見せかけながら、中盤から大きく外れていく。描かれるのは、親も子も一人の人間であり、その時々で行動や思考はブレるものということ。そして、自分の幸せを求めてしまう生き物である──そんな人間が隠してきた真実に踏み込んだ一作だ。
映画『かくしごと』 公開日:6月7日(金) 脚本・監督:関根光才 原作:北國浩二『噓』(PHP文芸文庫刊) 出演:杏、中須翔真、佐津川愛美、酒向芳、木竜麻生、和田聰宏、丸山智己、河井青葉、安藤政信、奥田瑛二 音楽:Aska Matsumiya 主題歌:羊文学「tears」F.C.L.S.(Sony Music Labels Inc.) 配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2024「かくしごと」製作委員会