上司への突き上げも「パワハラ」認定される!? 部下が発しがちな“あの言動”もアウトの可能性
部下が発しがちなアノ言葉が「アウト」になる可能性も
ーーこれも結構ある気がします 辻本弁護士:こういったことが多発しているのだとすれば、それは部下側が、「下からだとパワハラにならない」と誤解している人がそれなりいるからかもしれません。もちろんここまで述べたようにそんなことはありません。むしろ、たとえば、上司の発言に少し圧のようなものを感じ、「それってパワハラじゃないですか?」と切り返して指示に従わなかったりしたら、その発言がパワハラになり得るんですよ。 ーーそれはちょっと厳しいのでは… 辻本弁護士:もちろん一度だけでそう判断されることはあまりありません。上司の発言に対し、頻繁にそうした発言をしていると、パワハラと認定される可能性があるということです。上司もパワハラはいけないということを重々認識し、そうならないよう部下との関係性に苦慮していると思われますから。自身の発言に対して部下から「それってパワハラじゃないですか?」と切り返されるのは、想像以上にズシリときているはずです。
上司部下間のパワハラ格差とは
ーーパワハラにはまだ誤解も多そうです。ネット上では冒頭の事件に対し、「罰が軽いのでは」との声も多くみられました。上司から部下へのパワハラの方が処分は重くなるという判断はあるのでしょうか。 辻本弁護士:今回は懲戒処分の話になりますが、これまで説明したように、パワハラが認定されたらそこに、上司からか部下からか、という点だけで処分の軽重の差があるものではありません。ただ、上司からのパワハラの場合、その関係性の認定ハードルが低いとはいえるでしょう。上司と部下という関係性はすぐに証明できますから。 一方で、部下から上司へのパワハラだと、どういう点で上司より優越的な関係性なのかを証明するのは簡単ではありません。その意味では処分の軽重に差はないといっても、責任を問われやすい傾向にあるとはいえるかもしれません。 ーー上からはもちろん、下からでもパワハラがある職場というのは本当に「就業環境が害された」ムードが充満します。 辻本弁護士:上司側がパワハラに苦しんでいる場合、もしかすると相談しづらいとすれば、やはり、組織として第三者的な相談窓口を設けるというのは、ひとつの打開策になり得ると思います。 もちろん、当事者同士はたとえ処分して問題が解決したとしても引き続き同じ部署で働かせるのは合理的といえないでしょう。 結局のところ、パワハラも職場における人間関係に起因することになるので、理想をいえば、コミュニケーションの取りやすい雰囲気や仕組みづくりを意識しつつ、各自がより働きやすい職場になるよう、周囲への配慮も忘れないことが大切になるのではないでしょうか。
弁護士JP編集部