こんなクルマよく売ったな!!【愛すべき日本の珍車と珍技術】電動メタルルーフを国産車で初めて採用したシルビアヴァリエッタ!!
■スタイルの変化を自在に楽しめる
シルビアのオープンモデルといえばS13型にもラインアップされていたが、同車のルーフは電動ソフトトップだった。「ヴァリエッタ」では、ソフトトップではなく、メルセデス・ベンツSLKに採用されて流行の兆しを見せつつあった電動開閉式のメタルルーフを国産車として初めて採用したのが大きなトピックだ。 オープン時にはルーフを完全にトランクルームへ収納して美しいロングデッキプロポーションを実現し、ルーフを閉じると美しいクーペスタイルとなる。誰でも気軽にクーペとオープンの自在なスタイルチェンジが楽しめること、さらにソフトトップよりも遮音性、遮熱性、防盗性に優れているというメタルルーフならではの特徴をセールスポイントとしていた。 ルーフの開閉操作はシンプルで、車内に設けられたルーフ前部のロックを手動で解除したあと、ルーフ開閉スイッチを押し続ける。するとフロントのドアガラスとリアサイドガラスが下降しながらトランクリッドが全開になる。そしてルーフが自動的にふたつに折りたたまれ、後方に移動したあとトランク内に格納されてトランクリッドが閉まる。 操作に要する時間が約20秒と短時間であることや、トランク内に干渉物があるときにはルーフが作動しない安全対策も現在では決して珍しいものではないが、ソフトトップが主流だった当時としては画期的な機構だったことは間違いない。 居住空間は2+2のレイアウトを採用。フロントシートのメイン部には、世界で初めてモルフォ蝶の鱗粉が持つ発色原理を応用したモルフォテックスをシートクロスに織り込んだモルフォトーンクロスとした。 繊維が光の干渉することで発色する特殊な表皮は、濁りのない澄んだ色が得られるうえに見る方向によって光の干渉度が変わり色調が変化する。これがヴァリエッタの特別感を一層際立たせ、ユーザーに所有する優越感をもたらしてくれた。
■走りは爽快感と優雅さを重視
走行性能についてはベース車の能力を継承している。パワーユニットは排気抵抗低減を図ることで出力向上を果たした2L直列4気筒ツインカムエンジンSR20DEを搭載。トランスミッションは4速ATと5速MTが選べた。スペックはAT車とMT車で異なり、AT車は最高出力160ps/最大トルク19.2kgm、MT車は最高出力165ps/最大トルク19.6kgmというパフォーマンスを発揮した。 オープン化にともない、車重はベース車比で約130kg増となっているが、これに合わせて足まわりは専用セッティングが施され、同時にブレーキも強化されている。走りに特化した能力を有しているわけではないが、オープンカーならではの爽快感と優雅さは存分に味わうことができた。 車両価格は、5速MT車が279万8000円、4速AT車が289万5000円となかなかの高額。それもあって、2000年に登場して2002年にモデル廃止するまでの生産台数は1120台と、販売的に成功したとは言い難い。 それでも、美しいオープンスタイルとクーペスタイルを自在に楽しめる日本初の電動メタルルーフを持つ電動メタルルーフ版シルビアは、RV車が隆盛を極めつつあるなかで、スポーツカーの楽しさや魅力を強烈に印象づけた。