家屋廃材、アートな茶室に 進む解体「能登の風景残したい」
●珠洲で現代美術家・中村さん(穴水出身) 能登半島地震で生じた災害ごみが、アートな茶室に生まれ変わった。がれきをリサイクルして復旧・復興に活用する機運を高めようと、穴水町出身の現代美術家、中村厚子さん(42)=横浜市=が18日までに珠洲市内で完成させた。つぶれた家屋や壊れたキリコの部材を使った茶室を通じて廃材の価値を発信し、再利用を促すことで震災がれきの抑制につなげる。 茶室「とんがり庵」は三角錐(るい)の外観が特徴。中村さんらが今年1月、家の片付けボランティアで珠洲を訪れた際、まだ使えそうな家屋の部材が捨てられるのを見たのが制作のきっかけだった。 茶室や禅にも造詣が深い中村さんは4月、仲間と部材を集めて制作に着手した。2・5畳の内部には「床の間」を整え、窓も付けた。土台には子ども用キリコの担ぎ棒を使い、移動できるようキャスターを取り付けた。 茶室は能登半島東端に位置する珠洲市三崎町小泊に設置し、「みんなの広場」と称して住民やボランティアに開放する。広場近くには、中村さんらが滞在する施設「さだまるビレッジ」の竹下あづささん(36)らの協力で、仮の資材置きスペースも確保した。使えそうな廃材を保管し、家屋の修繕などに利用したり、希望者に提供したりする。 珠洲は奥能登国際芸術祭(北國新聞社特別協力)の屋外作品が展示されるなど、建築やアートとの関わりが深い。中村さんは現代アートとしての茶室を災害ごみ再利用のシンボルとしたい考えで、「能登の大事な風景がなくならないように協力し、使える部材を残したい」と話した。 ●各地で古い部材収集 坂茂さんらも活動 地震で発生した廃材を巡っては、世界的建築家坂(ばん)茂(しげる)さんも解体される住宅から出た部材を収集、再利用を呼び掛けている。 坂さんは5月下旬、珠洲市宝立町鵜島で自身が設計した木造仮設住宅の建築状況を視察した際、「能登が(現代的な)ハウスメーカーの家ばかりになってしまう」と懸念を示し、黒瓦や古い部材のリサイクル構想を明らかにした。 坂さんの建築事務所担当者によると、奥能登では個人レベルで古い部材の収集を進める人が複数おり、「この地震で能登の家並みの保全に危機感を持った人たちが、古い部材の利活用に協力できるようにしていきたい」と語った。