搭載する1.8リッター直噴ターボ “DIT”は、低回転域から300Nmの高トルクを発揮。レギュラーガソリンのため経済性にも優れる。

一部改良を受けたスバルの「レガシィ アウトバック」にサトータケシが乗った！ 【写真を見る】特別なレガシィ アウトバック リミテッドEX“アクティブ×ブラック”の内外装（21枚）

ちょっとアメ車っぽい

現時点におけるスバルの旗艦モデルがレガシィ アウトバックで、2023年秋に運転支援機能「アイサイトX」のバージョンアップを眼目とする小変更が施されている。このマイチェンのタイミングで追加された特別仕様車が、今回試乗したレガシィ アウトバック リミテッドEX“アクティブ×ブラック”だ。 レガシィ アウトバックのモデルラインナップはいたってシンプルで、シティ派のリミテッドEXとアウトドア派のX-BREAK EXの二本立て。といっても両者に性能面での違いはなく、装備や内外装の設えを変えることでキャラクターの差別化を図っている。 リミテッドEXをベースに、ルーフレールやフロントグリル、リアバンパーをブラック塗装にすることでルックスを精悍に仕立て、アウトドア派にはうれしい撥水ポリウレタンシートを装備したのが今回試乗した特別仕様車のレガシィ アウトバック リミテッドEX“アクティブ×ブラック”だ。 センターコンソールの縦型の液晶ディスプレイを中心とするインテリアはすっきりとシンプルにまとまっている。フラッグシップモデルであっても華美に飾らず、機能を重視するというスバルらしさが貫かれている。とはいえ、20世紀のスバル車のような「自分、不器用ですから」という素っ気なさは感じられず、樹脂パーツの色艶や手触りは上質だ。 走り出して真っ先に感じるのは、ゆったりとした乗り心地だ。サスペンションストロークが豊かで、路面からのショックの角を丸くしてくれる。誤解を恐れずに言えば、この“大船に乗った”感は、アメ車っぽい。 ただしレガシィ アウトバックは、凸凹をふんわりと乗り越えた後の上下動がきちんと収束するから、「フワフワしてキモチ悪い」とはならない。

価値ある400万円台

1.8リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジンとCVTを組み合わせたパワートレインは、「ホントにテンハチ？」と、勘ぐりたくなるほど低回転域から豊かなトルクを供給する。しかもモーターのように滑らかで、「やっぱ水平対向エンジンはいいなぁ」というひとりごとが口を突く。 スムーズなパワートレインと鷹揚な乗り心地があいまって、実にリラックスした気分でステアリングホイールを握ることができる。かっ飛ばさなくてもドライバーをリッチな気分にしてくれるあたり、このクルマはゴージャスではなく、ラグジュアリーなのだと思う。 あとでタイヤサイズを確認すると、225/60R18。見てくれ重視ではなく、機能と乗り心地重視で“ロクマル”扁平を選ぶあたりも、良心的だ。 スノーボーダーやサーファー、あるいはゴルファーが遠くを目指すのに、進化したアイサイトXは大きな助けとなるはずだ。 従来のステレオカメラに加えて超広角カメラが装備され、自動ブレーキが作動するシチュエーションが拡大している。当然ながら自動ブレーキを試す機会はなかったけれど、長距離ドライブに恩恵をもたらしてくれるのが、渋滞時のハンズオフをアシストする機能。 いまやアクセルとブレーキを操作せずに高速道路を走るのはあたりまえになりつつあるけれど、渋滞に巻き込まれて約50km/h以下に車速が落ちると、アイサイトXはハンドル操作からも解放してくれる。 前方に割り込まれると、最初はつい反射的にステアリングホイールを握ってしまったけれど、何度か繰り返すうちに確実に速度を落としてくれて、追突のおそれがないことがわかった。 大らかで、穏やかで、しかも細かいところまで気が利いて、まるで賢い大型犬のようなレガシィ アウトバックであるけれど、ひとつだけ気になったのがバチンと俊敏に加速したい時のレスポンスだ。滑らかではあるものの、期待に対してワンテンポ遅れる感じがある。 そこで登場するのが、ステアリングホイールのスポーク部分に備わる「SIドライブ」の操作スイッチ。こいつを押して「S＃」を選ぶとバチンと反応するようになり、不満は雲散霧消する。 今回、オフロード走行は試すことができなかったけれど、スバルの4駆システムの優秀さは過酷な場面で何度も確認している。くわえてこの乗り心地、スムーズなパワートレイン、それに余裕のある室内空間と高度な安全機能……。 クルマが軒並み値上がりしている昨今、この充実した内容が500万円以下で手に入るというのは、個人的には“コスパ大賞”を授けたい。