マクドナルド、モバイルオーダー急増 消えた行列とシステム障害の教訓
「現在、システム障害が発生しています。お客様にはご迷惑をおかけしますが、復旧まで今しばらくお待ちください」――。 【関連画像】来店客をサポートする、おもてなしリーダー(右)(写真:日本マクドナルド提供) 3月15日午後4時少し前、マクドナルド公式X(旧ツイッター)は「お知らせ」と題し、全国のマクドナルド店舗でなんらかの不具合が起きていることを投稿した。 システム障害が原因でレジ端末でのキャッシュレス決済ができなくなったほか、スマートフォンから注文する「モバイルオーダー」や宅配サービス「マックデリバリー」が利用できなくなり、一部店舗は営業を停止した。システム障害は国内のみにとどまらず、米国をはじめ海外でも確認された。米マクドナルドは、システム障害はサイバー攻撃によるものではなく、第三者による設定変更の作業によって引き起こされたとしている。 システムの不具合があった間、現金のみの対応とすることで営業していた店舗もあったが、SNSでは「こんな日に限って財布を忘れた」と、キャッシュレス決済ができず来店を断念する客もいた。国内店舗は、翌日16日の午前11時ごろにはシステムが復旧し、通常営業を再開した。 システム障害から数日たった3月中旬のとある平日、立ち寄った横浜市内のマクドナルド店舗はすっかり普段のにぎわいを取り戻していた。そして、お昼時にもかかわらず注文待ちの行列ができていなかった。 2台あるレジのうち1台は稼働していない。しかし、レジの左側は5人ほどが立って混雑している。注文した商品の受け取りを待っている人たちだ。商品提供カウンターの上に取り付けられたモニター上に「お待ち番号」「お呼出中の番号」がそれぞれ表示されていた。 注文待ちの行列がほとんどないにもかかわらず、多くの客が商品の受け取りを待っているのは、日本マクドナルドが2020年1月から本格導入しているモバイルオーダーを経由した注文が増えているからだ。 モバイルオーダーを利用すれば注文と決済がオンライン上で完結。注文待ちの列に並ぶことなく商品を受け取ることができる。店内のモニターで数字の前に「M」で表示され、テイクアウトも店内飲食もどちらでも可能だ。記者が店に入った時、受け取り待ちの9組中7組がモバイルオーダー経由での注文だった。 「お昼はレジが混むという認識があり、モバイルオーダーを利用するお客様が特に多いのではないか」と日本マクドナルドマーケティング本部ナショナルマーケティング部部長の藤本靖氏は話す。モバイルオーダー利用者でもっとも多いのは30代~40代。小さな子どもがいる家族連れが行列に並ぶ負担を軽減するために利用するケースが多いという。 モバイルオーダーは国内のマクドナルド約2900店舗のうち、ほぼ全店で導入済み。クレジットカードだけでなく、電子マネー決済なども可能になり、利用者の幅が広がっている。23年、カウンター注文が可能なマクドナルド店舗で、モバイルオーダーが占めた割合は平均約23%だった。休日やお昼時は注文の半数以上がモバイルオーダーになることもあるという。 日本マクドナルドの持ち株会社、日本マクドナルドホールディングスの日色保社長は2月に開いた23年12月期の決算説明会で、「モバイルオーダーについては、継続的に利便性の強化をはかっていて、(公式アプリの)月間アクティブユーザーは2500万人以上と国内有数の利用者数を持つものとなっている」と胸を張った。 同社は23年12月期に全店売上高7777億円、営業利益408億円とともに過去最高を記録したが、その原動力の1つとなったのがモバイルオーダーの浸透による注文チャネルの多様化と、これまで長い行列を見て入店を諦めていた見込み客の取り込みに成功したことがある。 モバイルオーダー浸透のもう1つのメリットが、レジ業務に割く人員を削減できることだ。