『ブルーモーメント』が描く対自然災害の脅威 山下智久がSDMの“存在理由”に向き合う
何かを企んでいそうな政治家・新島元樹(伊藤英明)の気になる動向
さらに目が離せないのは、汐見と優吾の仲が悪いような良いような不思議な関係性。トラウマに脅えていた汐見は、優吾のストレートな表現に励まされ、自分を奮い立たせてSDMに合流。その後も励まし、励まされる関係になっていく。また運用停止後は、SDM再始動に向けて熱くなりすぎる優吾を汐見がなだめる姿も印象的だった。汐見にとって時に優吾は強い自信となり、優吾にとって時に汐見は冷静に物事を見せてくれる、お互い必要な存在になってるのだ。 汐見と優吾に加え、心のしこりを打ち明けた丸山ひかる(仁村紗和)、地図オタクでありチームを明るい雰囲気で包む山形広暉(岡部大)、豊富な経験知識と的確な指示でまとめる沢渡満(橋本じゅん)のバランス感ばっちりなSDMチームは、半年という期間離れていたにもかかわらず、彼らの関係性はさらにレベルアップしていたように思う。また、少し離れた場所からSDMを見守る特命担当大臣・園部肇一(舘ひろし)と総務大臣・立花藍(真矢ミキ)は、最初は対立関係にあるかのように描かれていたが、実は立花はSDMに希望も見出しており、徐々に理解者となっていった。 しかし、続いて現れたのは伊藤英明演じる政治家の新島元樹だ。園部大臣がガス爆発事故の責任を問われる中で不気味な笑みを見せる彼は、SDMに理解を示していたものの、一方で何かを企んでいる様子。『海猿』で見せたような真正面からの正義感と、『悪の教典』のような不気味さを併せ持つ伊藤英明。キャリア初の政治家という役柄の新島をどう体現していくのか気になるところだ。 前後編に分けられる最終回では、園部大臣の窮地とともに、史上最強クラスの台風が日本列島に押し寄せる。260万人以上を避難させる必要があるこの大災害に、パワーアップしたSDMチームが立ち向かう姿をしっかりと見守りたい。 今まで警察、救命医療、海上保安庁……と自分の身近に起こる可能性のある事件・事故や人命救助をテーマに描かれた作品は人気シリーズとなり、続編や映画化が当たり前となっていた。“空を読み、命を救う”本作はドラマとして、また映像作品としてどのような結末を迎えるのだろうか。
伊藤万弥乃