釧路で新たなメガソーラー計画 エリア内には希少種の営巣木も
釧路湿原国立公園に近い北海道釧路市の市街化調整区域で新たなメガソーラー設置計画が明らかになった。北園地区と昭和地区の総面積約27・3ヘクタールの原野などに出力21メガワット強、パネル枚数3万6579枚のメガソーラーが計画されている。【本間浩昭】 【写真】釧路のメガソーラー計画エリアに希少種の営巣木確認 業者と食い違い 国内でこれまで689カ所の太陽光発電事業を手がけてきた「日本エコロジー」(大阪市)が計画。14日夜に近隣住民ら約40人が出席する説明会で報告された。 ドローンで撮影された写真を見れば、計画が進むと、釧路外環状道路沿いに他の業者が設置済みのメガソーラーの西側と南側の大部分が太陽光パネルに覆われてしまうことになる。住民からは景観やパネル火災、大雨による水害などに対する不安が続出した。 日本エコロジーの大井明雄営業部長は太陽光発電のメリットとデメリットを説明。釧路外環状道路の近くに既存のメガソーラーが設置されていることを理由に「初めてやる場合は景観が損なわれるが、すでにたくさんパネルが建っていて田園風景でなく、ほぼ景観は壊れている。デメリットよりもメリットの方が勝る」などと説明した。 近くに住む主婦、高野彩さん(43)は「自然が釧路のよさなのに『景観が壊れているから問題はない』というのは納得できません。これ以上、増えたらゾッとする」と不安げな表情。「地震が起きて火災になったらなかなか鎮火しないし、(パネルに含まれる)カドミウムや鉛も危険」と計画に反対した。 一方、この日の説明会で大井部長は「希少生物のオジロワシ、タンチョウ、キタサンショウウオがいればできないということで博物館の担当者と何回も協議している」と述べていた。さらに予定地に「希少生物は存在しない。(オジロワシの)巣がない」とも明言した。 だが、翌15日、記者が事業予定地を歩くと、昭和の計画地(2・73ヘクタール)付近の水路わきにオジロワシの営巣木を確認した。1メートルを超える2段の大きな巣で、使われてきた歳月の重みが感じられた。 オジロワシの営巣は通常、1月に入ってからで今冬はまだ営巣が始まっていないが、近くで「ケケケケケ」と鳴き合う求愛行動らしき鳴き声も聞こえた。釧路市立博物館と研究者に照会したところ、「かなり前から毎年のように営巣している」とのことだった。 この巣のある地点が事業予定地に含まれているかどうかは現時点で分からない。ただし、一般的に、近くに巣があって開発を行う場合、営巣に影響を及ぼさないような工法や計画の変更などが求められる。しかし、大井部長は予定地に「希少生物は存在しない」としており、調査に同行した松橋尚文市議は「地元説明会での説明は、実際とは違うのではないか」と指摘する。 また、200メートルほど離れた昭和地区の事業予定地は過去にキタサンショウウオの卵嚢(らんのう)が確認され、生息地とみられている。市のガイドラインに基づけば、詳しい調査が必要とされる。