アップルが10億ドル投資 中国版Uberで変わった上海の交通
中国では何かと投資に関する動向に注目が集まります。その中でも、タクシー配車アプリ「滴滴出行」が5月にアップルから10億ドルの投資を受けたことで話題になっていました。このアプリにはこれまでにもアリババやテンセントなど、中国を代表する企業などからも多くの投資を受けており、今回のアップルからの投資を受けてか、アリババはグループとしてさらに4億ドルの追加投資を行うことになりました。
利用客数は1億人を突破
滴滴出行はタクシー会社のタクシーだけではなく、一般乗用車による白タクシーや運転代行などを手配できるアプリです。2012年9月からサービスを開始し、2013年にはAppStore中国優秀アプリに入選しました。2014年には多くの人々に浸透し始め、利用客数が1億人を突破、登録ドライバー数も100万人を超え、1日の平均利用者数も500万人を超える圧倒的なインフラとなりました。そして、2015年の1年間の利用回数はなんと、14億3000件を達成したそうです。 今回アップルからの投資が発表されたことで、日本でも本アプリについて紹介されることがありました。一方で、このアプリによって変化した日常的な交通インフラについてはあまり語られていないようです。もちろん、中国とはいえ各都市によって違いはあるとは思いますが、少なくとも上海においては滴滴出行やUberなどの配車アプリなしでの生活は考えられなくなりました。
混雑時は追加料金でタクシーの手配が可能に
現在上海の一般的なタクシーの初乗り料金は14元(約232円)で、夜間は16元(約266円)と日本に比べて安く、上海中心部の移動であれば初乗りから30元(約498円)以内の料金で利用できるため、タクシーは重要な交通手段の一つです。 このアプリの登場以前も、週末や雨天の夕方から夜にかけてはタクシー利用者も多く、空車を探すのは困難でした。近年は空車のサインを出しているタクシーを見つけても、すでに何かのアプリで呼ばれているから乗せられない、という事態が多いです。現地生活に慣れていない外国人旅行客がタクシーに乗るのは不可能に近い、と言っても過言ではないでしょう。 さらに、もう一つの大きな変化がピーク時の料金です。通常利用時にも手数料はかからないのですが、混雑時には利用者が多いため、追加料金を設定することでタクシーの手配が可能になります。だいたい標準の追加料金が10元(約166円)、週末の夕方で大雨となると20元(約332円)以上の追加料金が必要になります。追加料金を設定しないで待つことも可能ですが、タクシー運転手が応じてくれる可能性はないに等しいでしょう。この料金の変化は、実に大きな変革です。配車アプリが、タクシー会社自ら料金システムを変えることなく、料金の値上げと運転手の賃金アップを可能にしたのです。
期待されるビッグデータへの応用
一方で、Uberなどの競合他社は、滴滴出行よりも安い料金設定で顧客の獲得を目指しており、アプリを使いこなす上海の若者を見る限りUberの利用者も増えてきています。また、先日トヨタ自動車が発表したUberとの協業と戦略的出資にも注目です。車の所有欲が強い中国において、トヨタ車をリースで使用できるUberによる登録ドライバーの囲い込みも考えられるでしょう。日本では白タク自体が禁止されているため、認知や関心度も低いライドシェア業界ですが、単なる配車にとどまらずそのアプリから得られる交通と移動に関するビッグデータにも注目が集まります。