センバツ2024 近江 選手の胃袋がっちり 管理栄養士の米井さん /滋賀
◇体作りの基礎支える「おふくろの味」 今春のセンバツに出場する近江で、育ち盛りの選手たちの胃袋をつかみ、体作りの基礎を支えるのが、学校食堂に勤める管理栄養士の米井博之さん(39)だ。スポーツフードアドバイザーの資格も持ち、「選手たちにとっては食堂の料理が青春時代の『おふくろの味』。親になったつもりで作ってます」とやりがいを語る。【礒野健一】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 米井さんは中学2年生まで器械体操を続けていたが、肩や腰のけがで競技を断念。それでもスポーツに関わる仕事がしたいと大学で栄養学を学び、プロスポーツチームの食事などを提供する会社に就職した。2016年に近江高の食堂に着任した時は、選手たちの食生活のバランスの悪さに驚いた。「甲子園出場が決まった夜でさえ食堂ではあまり食べず、寮でカップラーメンを食べる子もいた。3食しっかり食べる習慣を身につけさせなければ」と決意した。 厳しい練習で、選手たちの消費カロリーは1日3000~4000キロカロリーにもなる。食が細くなる夏場は、放っておくとすぐに体重が落ち、試合を戦うスタミナもなくなる。「夏はさっぱりとした麺類や、揚げ物でも酸味のある油淋鶏(ユーリンチー)などで食欲を促す。苦手な子が多い野菜はみそ汁に入れたり、塩だれで混ぜたりしながら、おいしさを損なわず、栄養に偏りが出ないよう工夫している」と説明する。 夕食は寮生だけが食堂を利用していたが、バランスがよい食事が取れることから数年前からは野球部の自宅生も一緒に食べるようになった。米は多い時は1食で約30キロを炊くが、窓から練習の様子を見て、炊き上がりの時間を逆算。「炊きたてを食べてほしいから」と気遣いを見せる。日に一度、選手が共にテーブルを囲むことでチームの一体感が強まる効果も出ている。 選手とは栄養面だけでなく、プライベートなことまで気軽に相談に乗る。後輩の激励に来た卒業生が「何か食べさせて」とやって来ることもあるという。「そんな交流が続くのもうれしい。最初は兄貴分だったけど、最近は父親的な立場になってきた」と笑う。現チームでも寮生の大石尚汰選手(2年)や嶋村隆吾選手(同)らとよく話をするという。「今年は明るい選手が多く、学年を超えて仲がいい。甲子園では勝利を願うが、けがなく帰ってきてくれることが一番の願い」とほほ笑んだ。