ホンダ・日産の統合協議、ルノー保有の日産株が焦点に…台湾・鴻海が取得を模索か
ホンダと日産自動車の経営統合に向けた協議は、日産の筆頭株主である仏自動車大手ルノーの対応がカギを握る。ルノーは両社の統合を支持しているとの情報がある一方で、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、ルノーが保有する日産株の取得を狙っているとされているからだ。ホンダの株価は、統合を不安視されて下落し続けている。両社は統合の道筋と効果を早期に示す必要がある。(中村徹也、北京 山下福太郎) 【ひと目でわかる図解】ルノーが保有する日産株式の状況
日産とルノーは2023年、両社の資本関係を対等にすることで合意した。ルノーは当時、日産株の43%を保有していたが、議決権の行使は双方15%までとすることなどを決めた。
この取り決めにより、ルノー側が保有する日産株は2種類の管理がなされている。一つはルノーの直接保有分で、24年9月時点で約16%ある。保有比率は多少増減するが、議決権の行使は15%までに制限されている。
残りの約23%(24年9月時点)は原則として議決権を行使しない株式で、信託会社が管理している。ルノー側はこの信託分を段階的に減らしており、売却にあたっては、日産が「筆頭候補で優先的な地位」を得る契約となっている。ただ、日産の公表資料によると、ルノーが「日産と協調的で秩序あるプロセスにおいて自由に売却できる」との記載もある。
鴻海は、この信託分の取得を模索しているとされる。
台湾の中央通信社は19日、鴻海で電気自動車(EV)分野の責任者を務める関潤氏がフランスに滞在し、ルノーに対して日産株の譲渡を求めて交渉していると報じた。関氏は元日産幹部で、日産退社後に日本電産(現ニデック)社長も務めた。一方、米ブルームバーグ通信は18日、ルノーが日産とホンダの経営統合を支持する方針だと報じた。
市場関係者からは、統合がホンダに与える影響を懸念する見方も出ている。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは18日、経営統合は、両社の信用力を大きく左右するとのレポートを公開した。財務基盤の弱い日産の信用力にはプラスに働くが、ホンダにとってはマイナスになるとし、「両社は主要な販売地域が似ており、補完効果は大きくない。厳しい事業環境が続く中、統合まで時間がかかれば、信用力に消極的な影響も大きくなる」と指摘している。
19日の東京株式市場では、ホンダ株は続落した。統合協議が伝わる前日の17日終値と比べて5%下落の1220円まで落ち込み、年初来安値となった。