“親性”に男女差ナシ!「パパが子どもと触れ合った方がいい」科学的根拠|VERY
冬休みに突入して、朝から公園で全力の追いかけっこ、お気に入りの絵本の無限リピート、「ママ見て」攻撃…。子どもの遊び相手はママじゃなきゃダメ!?今回は、科学的な観点からパパも子どもと触れ合って遊んだ方がいい理由を解説します。
タスクではないけれど、正直一番大変で重要な役割かもしれない
子どもの遊び相手、ママじゃなきゃダメですか? ◉profile 京都大学大学院教育学研究科教授 明和政子さん 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。同大学霊長類研究所研究員などを経て、「比較認知発達科学」を開拓。近著に『マスク社会が危ないー子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』(宝島社新書)など。
❝“親性”は育てるもの。脳の形や働きに明確な男女差はありません❞
1. 「ママがやらなきゃ!」の意識を手放す ヒトの子育てはもともと「共同養育」という、集団で子どもを育てるスタイルを取っていました。チンパンジーが大体7年ほど(子が自立するまで)の周期で子どもを産むのに対し、ヒトは授乳中でも2年ほどの周期で排卵が始まり、子どもを産むことができます。これは母親の役割として「産む」ということに比重を置き、「育てる」という役割を集団で担ってきたヒトの生存戦略ともいえるのです。 ですから、ママが1人で育児をするというのは、本来不自然なことなのです。祖父母や地域の人々など、みんなで子どもの成長を見守ってきた昔と比べ、核家族化が急激に進んだことで「共同養育」の育児スタイルが崩れたのも、この数十年の話です。現代の日本の育児スタイルの中で、本能的にママが「誰かに頼りたい」と思ってしまうのは当たり前のこと。誰かにお願いすることやサービスに頼ることに、引け目や遠慮は感じなくていいんですよ。 2. 母性・父性ではなく“親性”を家族で育てる ヒトの脳は人それぞれに様々な特徴を持ち合わせており、男性的・女性的という分類を遥かに超えた構造をしています。つまり、性別学的に育児や家事に対する“向き・不向き”はないのです。まずはこの事実をパートナーと理解することが重要です。また、男女関係なく、子育てをする際に機能する脳のネットワーク(親性脳ネットワーク)を持っていますが、これが機能しないと子育てをしたいという動機を高めたり、適切にふるまうことが難しくなります。ある実験で、育児を担うママ・子育て関与の少ないパパ・育児を担うパパ(専業主夫)の3タイプに赤ちゃんの様子を映した動画を見せたところ、ママと専業主夫では、脳の反応に同じ動きが見られました。 つまり、親性脳は「経験」によって育まれるということが科学的に証明されたのです。ママ自身も初めから親性脳ネットワークを備えているわけではないので、2人でゼロベースから「親性脳」を育てていく意識が大事です。やり方の説明が面倒、任せたら失敗しそうという理由で、パパの親性脳を育む機会を奪わないことも大切です。普段の保育園とのかかわりや、児童館へのお出かけ等で一緒に子どもと遊び、親も自分たち以外のパパやママと触れ合う。そういった経験の場を増やしていくことが必要だと思います。 3. 触れ合って遊ぶことで子どもとの絆を深める 子どもと触れ合って遊ぶことで、オキシトシンを中心とする内分泌ホルモン、愛情ホルモンと呼ばれるものが放出されます。これは「信頼できる相手との絆を高めるためのホルモン」で、触れ合っている両者から出されるものです。パパが子どもと“触れ合って”遊ぶ時間を増やすことで、お互いに愛情が深まり、結果として育児にかかわっていく機会や時間を増やすこともできるかもしれません。 逆に、普段から触れ合っていないと、たまに触れ合った際に相手を敵だと認識してしまい、対象への攻撃性を高めてしまうホルモンでもあります。そのため、遊びをママに任せきりにすればするほど、子どもとの関係は不仲に…? なんてことも起こりえます。そんなことを望んでいるパパはきっといないですよね。ぜひこの事実をパートナーにもシェアいただき、手を繫いだり、抱っこをしたり、簡単な“触れ合う”という時間を増やすところから、取り組んでみるのもいいかもしれません。