出生率低下に対する各国の対策…有効な解決策を見つけた国はまだない(海外)
取得しやすい休暇と柔軟な労働条件
金銭的なインセンティブの支給は、子育て費用の負担感が出生率低下の主な原因であるという前提に基づいていることが多い。 しかし、シンガポール国立大学のポー・リン・タン(Poh Lin Tan)助教授は「さまざまな要因」が人々を少子化に追い込んでいるとBusiness Insiderに語っている。 シンガポールにおける少子化の要因としては、教育に費やす時間の増加、伝統的な家族関係の変化、家庭を築くこととキャリアを築くことの葛藤などが挙げられるという。 2023年、シンガポール政府はこれらの要因に対処するため、父親の有給育児休暇の期間をこれまでの2倍となる4週間とし、子どもが2歳になるまでに取れる無給の育児ケア休暇をこれまでの年間6日から12日に増やすことにした。 北欧諸国はさらに進んでいる。有給育児休暇は、ノルウェーでは49週間、フィンランドでは親1人につき7カ月、スウェーデンでは親1人につき240日間が提供されている。 しかし、メリーランド大学の家族人口統計学者フィリップ・N・コーエン(Philip N.Cohen)は、これらの政策は意図しない効果をもたらすことが多いとBusiness Insiderに語っている。例えば、有給育児休暇や政府からの子ども手当などの特典を最大限に利用できるように、次の子どもを持つ時期を先延ばしにすることで、かえって少子化につながることがあるという。
生殖機能を復活させるための助成金
コーエンは出生率を高めるためのもうひとつの戦略としてイスラエルの例を挙げ、そこでは体外受精を無償または多額の助成金を得て受けることができると紹介した。 しかしこれも、ユダヤ系イスラエル人女性の結婚と出産が先延ばしされるという意図しない結果につながったとアメリカ経済学会が指摘している。 ハンガリーも出生奨励政策の一環として無償の体外受精を実施しており、シンガポールと日本も多額の助成金を支給している。 しかし、タンは2020年に発表した小論で、日本の例は生殖技術が低出生率に対する万能薬ではないことを示していると指摘した。日本は体外受精で生まれた子どもの割合が世界で最も高いが、出生率は最低レベルだというのだ。 韓国政府も卵子凍結など、さまざまな生殖技術治療の費用を負担している。最近では、精管切除や卵管結紮の手術を受けた人が、生殖機能を復活させるための手術を受ける費用として、政府が最大730ドル(約11万5000円)を100人に提供するという提案をして話題になった。
Joshua Zitser