「ハイパフォーマンスSUVは欲しいけれど、それを人にひけらかすつもりはない」そんな上品な人に強力にすすめたい1台 レンジローバー・スポーツSVの万能性を試す!
4.4リッターV8ツインターボ・エンジンの最高出力は635馬力!
レンジローバー・スポーツの最上位モデル“SV”をポルトガル・アルガルヴェを中心とした様々なステージで、モータージャーナリストの大谷達也がテストした。 【写真29枚】635psの4.4リッターV8ツインターボ・エンジンを搭載するスーパースポーツSUV、レンジローバー・スポーツSVの詳細画像はこちら ◆スーパースポーツカー並み 先代は“SVR”と名乗っていたレンジローバー・スポーツのハイパフォーマンス・バージョンが、新型では“SV”と呼ばれることになった。Rが抜けると性能が下がったようにも思えるが、4.4リッターV8ツインターボ・エンジンの最高出力は635psで、旧型を60psも凌いでいる。コーナリング性能だって最大1.3Gを記録するというから、まさにスーパー・スポーツカー並み。パフォーマンスに対する不安は無用である。 じゃあ、新型レンジローバー・スポーツSVは先代にも増して凶暴かといえば、決してそんなことはない。それどころか、見ためも快適性も、こうしたスペックが信じられないくらい洗練されていて心地いいところが、レンジローバー・スポーツSVの最大の魅力といって構わないくらいだ。 国際試乗会の舞台はポルトガルのアルガルヴェ地方。まずは一般道を走りはじめると、そのしなやかな乗り心地に感銘を受ける。先代のゴツゴツ感がすっかりと消え、滑らかにサスペンションがストロークする様は、標準モデルのレンジローバー・スポーツとまったく変わらないか、むしろ快適と思えるくらい。それでいて高速道路ではフラットな姿勢を崩さない。もう、これだけでも“魔法の足まわり”と名乗る資格は十分にある。 ◆マクラーレンに似ている けれども、本当に驚かされたのはアルガルヴェ・サーキットを走ったときのこと。このときだけはタイヤを標準装備のミシュラン・パイロットスポーツ・オールシーズンからパイロットスポーツS5に履き替えたが、ハード・コーナリングを試してもグニャグニャとした感触は皆無。しかも、ロールの量が巧みに規制されているうえ、ロールした際の姿勢も安定しているので、まったく不満を覚えない。さすがに、スポーツカーのようなヒラリヒラリという軽快感は味わえないけれど、絶対的なコーナリング性能は最大1.3Gというスペックが納得できるほど優れたものだった。 その秘密は、新機軸の6Dダイナミック・エアサスペンションにある。これは4輪に取り付けられたダンパーの油圧回路を相互に連結することでロールやピッチを自然と抑える効果を生み出すもの。細部に多少の違いはあるが、その原理はマクラーレンのプロアクティブ・ダンピングコントロールとよく似ている。アンチロールバーが不要となった点も、マクラーレンと同様である。 アンチロールバーを省いたおかげでオフロード走行時の走破性が向上したのもレンジローバーにとっては都合がいいところで、今回も過激なレイアウトの悪路をいとも簡単に走りきって私たちを驚かせたのである。 しかし、個人的にもっとも感銘を受けたのは、オリジナルの世界観をそのまま引き継いだ美しいデザイン。ハイパフォーマンスだからといって、そのことを誇示するのではなく、品がいい内外装にほんのちょっとだけモディファイを施したセンスのよさはこれまでになかったもの。 「ハイパフォーマンスSUVは欲しいけれど、それを人にひけらかすつもりはないんだよねえ」という上品な方にこそ、強力にお勧めしたい1台である。 文=大谷達也 写真=ジャガー・ランドローバー (ENGINE2024年5月号)
ENGINE編集部
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