努力義務1年、自転車ヘルメット着用率上昇 大人への浸透に課題残る
昨年4月の道交法の改正で自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務となり、1年が経過した。街中を歩くと、ヘルメットの着用者は少し増えたようにも感じるものの、果たして実態はどうか。 福島民友新聞社は昨年に続き、福島、郡山、いわき、会津若松の4市で着用状況を調べた。(取材班)
【調査の方法】
調査地点は昨年同様、福島市の飯坂街道、会津若松市の国道118号、郡山市のさくら通り、いわき市の鹿島街道の4路線周辺。4月後半から今月上旬の平日午前7時~同8時半と同10時~正午に行い、記者が目視で確認した。通勤や通学と、高齢者の移動が多いとみられる二つの時間帯に分けた。雨天は避けた。 後ろにヘルメットを着けた子どもを乗せていても、運転する大人がヘルメットを着けていなければ、未着用1人として数えた。
高校生校則で促進、大人浸透せず
調査地点は、昨年との変化を確認するため同じ場所とした。調査結果は【表】の通り。計1509人中、ヘルメットを着けていたのは294人で着用率は19.48%。昨年の調査に比べて14.62ポイント上昇した。 いわき市では、昨年の8.22%から今年は73.50%と急激に上昇。調査地点近くの平工高で、今年4月から着用が校則で定められたことが結果に大きく影響した。ただ、午前7時~同8時半の調査で同校生徒を除くと着用者は数人ほどだった。そのほか、郡山市は約10ポイント、福島市は約8ポイント、会津若松市は約3ポイントそれぞれ昨年を上回り、少しずつではあるが、各地で着用が進んでいることが分かった。 平工高1年の男子生徒(15)は「(校則となったことに)特に抵抗はない。習慣が身に付いて、プライベートでも着用するようになった」と話す。郡山女子大付高1年の女子生徒(15)も「中学でもかぶっていたから、違和感はない」と話した。
「日よけにならない」「髪形崩れてしまう」
一方、午前10時~正午の着用率は4市とも目立った変化はなく、大人の間では着用が進んでいない現状が浮かび上がる。福島市の主婦(72)は「着けた方がいいとは思っているけれど、ヘルメットは日よけにならないし...」と着用に気が進まない様子。20代の女性会社員も「着ける時以外の持ち運びがおっくうで値段が高い。髪形も崩れてしまう」と話した。努力義務は理解しつつも、かぶりたくない事情があるようだ。 交通事故対策に詳しい福島大共生システム理工学類の永幡幸司教授は「全国的にヘルメット着用の動きは広がっていない」との認識を示す。「罰金などの『強い取り締まり』か、着用していれば買い物で割引があるなどの『メリット』の二つしか着用率を向上させる方法がないのでは」と努力義務だけでの浸透の難しさを指摘する。 警察庁によると、自転車運転中の交通事故で、死者の約半数が頭部に致命傷を負っている。また、2019~23年の5年間の致死率を見ると、ヘルメット未着用者は着用者に比べて約1.9倍高い。県警交通企画課の担当者は「ヘルメットは救命効果が高い。世代にかかわらず、自分の命を守るために着用してほしい」と訴える。