幕末の志士が突然、時代劇の〝斬られ役〟に 山口馬木也が初主演、低予算を逆手にとった生身の決闘 映画「侍タイムスリッパー」
【エンタなう】 たった1館の上映から始まり、公開9週にして251館に拡大、先週末の興行成績で7位に躍り出た映画「侍タイムスリッパー」は、文句なく面白い時代劇だ。主人公の朴訥な田舎侍が、最初から最後まで、日本人が忘れていたものを思い出させてくれる。 【写真】異例の大ヒット「侍タイムスリッパー」出演の冨家ノリマサ、熱く懇願「山口馬木也に主演男優賞を！」 時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門は、「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命で、闇に身を伏せる。倒幕派の武士が現れると、名乗り合って刃を交えるが、その直後、雷鳴が轟く。目覚めたのは、現代の時代劇撮影所だった。 命を賭して守ろうとした江戸幕府がとっくに滅んでいたことを知り愕然。一度は死を覚悟するが、心優しい周囲の人々に助けられながら、時代劇の「斬られ役」として身を立てようとする。時代劇は今や風前の灯火だが、ある大作と運命的な出合いを果たす…。 数多くの時代劇、大河ドラマに出演してきた山口馬木也が本作で初主演。「脚本が面白いんだ」と出演を快諾したベテラン、冨家ノリマサとともに、迫真のチャンバラを見せる。CGやワイヤを使わず、低予算を逆手にとった生身の決闘はサムライそのものだ。 勝手のわからぬ現代で、寺の住職夫婦の世話になる高坂が、イチゴのショートケーキをふるまわれ、涙する場面が印象的。だれもがこんなうまいものを口にできる世になったのか…と。1967年生まれの安田淳一監督は、大学在学中から映像を撮り続け、自主製作映画から夢をつかんだ。
