決められたルートを走らなくてはならない「路線バス」! 突発的な事故やイベントで通行止めなどが発生したらどうする?
路線バスはそう簡単に自由には走れない!
公共交通機関として日常生活に欠かせない路線バス。昨今ではドライバー不足による減便や運休といった話題で注目を集めている。 【画像ギャラリー】蘇った60年前の激レア路線バス「MR430 路線バスはその名のとおり、決められたルートを走行することで、住宅街から繁華街などさまざまな場所に設けられた停留所をまわるのが一般的だ。 そこで気になるのが、事故で通行止めになった場合や不測の事態で渋滞に遭遇した場合は、ルートを外れるのか? という点だ。筆者も自宅から駅へ向かう際、路線バスを利用することもあるが、いまだかつて決められたルートを外れたということに遭遇したことはない。 そこで、今回は関東のあるバス会社の運行管理を担当している方にその辺りの事情を聞いてみた。すると回答は「路線バスは基本的に大幅なルート変更はないです。国に対して、◯◯系統はA地点からB地点を経由してC地点に至る路線であると認可を受けていますので。ただし、回送でしたらこの限りではないです」とのこと。 つまりは公共交通機関であり、乗客から運賃を収受している事業者であるため、当然ながら国からの認可が必要であり、基本的には営業路線として決まっているため、そのルートを外れることはないというわけだ。そして、乗客を乗せることなく営業をしていない「回送」であれば、この限りではないということになる。
事故やイベントで通れなくなったイレギュラーな場合は?
では、決められた路線上で、道路が通行止めとなった場合はどうなるのか? この場合、大きくふたつのケースが考えられる。ひとつは大きな祭事など、事前に通行止めがわかっている場合だ。 これに関しては、「祭事などで終日通行止めがあり、ルートを変更する場合、事前に申請が必要になります。その場合、運行について、利用者向けにもバス停やホームページなど、告知が必要となります」とのこと。 事前に通行止めがわかっているので、警察署など地元の自治体や利用者に向けて案内などをしてあれば、ルートの変更が可能というわけだ。こうしたケースは花火大会や大きなお祭りなどで、事前にバス停などに告知が貼られていたりすることを目にした人もいるだろう。 ふたつ目のケースは、突発的な事故など通行止めになった場合だ。これについては、「乗務員が勝手に判断して迂回をすることは許されません。もし、事故などで通行止めに遭遇した場合、無線機や業務用電話などで営業所に連絡し、運行管理者の指示を受けて、その指示に従って運行されます。また、運行管理者も、可能な限り元のルートに近い迂回ルートを設定します。その場合、とくに気をつけなくてはいけないのが、迂回ルートが右左折禁止箇所、大型車通行禁止など各制限に該当しないルートであるかどうかなどです」 また、迂回運行を実施した場合、事務処理も必要で ・何の影響で迂回を伴ったか。 ・何時から何時まで、何台の車両が迂回を実施したのか。 ・迂回ルートは本来の経路とどう異なっているか、地図を添えて報告。 ・本来のルートの運行距離は◯kmだが、迂回ルートは◯km。距離差は◯km。という増減表の作成。 など、が必要になるとのこと。 急遽ルートが変更された場合も、大型車両となるバスでは気軽にルートを決められないという点も路線バスならではといえる。基本的にルートに決まりのないタクシーであれば、車両が乗用車ということもあり、乗務員の判断でルートを変更できるが、バスの場合は事前に申請され、認可を受けた乗り物であり、なかなか簡単にはルートの変更ができないようだ。 ちなみに、1日に1本とか週に1回しかバスが走らない路線というものが存在するが、これは免許維持路線とよばれている。万が一のときに突発的な迂回が発生した場合、「その路線が絡んでいたら迂回ルートとして使用することができる」という理由もあるそうだ。 路線バスは鉄道と並んで地域の人たちにはなくてはならない存在だが、公共性と信頼性、安全性を高いレベルで確保するため、複雑な決まりが多く、ドライバー以外にも運行にかかわる人々の苦労の結晶で築きあげられているといえるだろう。
井元貴幸