ナズナ、ネコジャラシ…花材に”出世” 生花店での扱い増える 自然な風合いで人気
ナズナや宿根コバンソウ、ネコジャラシ――。身近な雑草に見える草花の園芸品種を売り込む動きが花き業界で出ている。素朴な見た目で自然な風合いを感じると、消費者ニーズをつかむ。産地や種苗メーカーは名前を変えて新鮮味も演出。生花店での扱いが増え、新たな成長品目に躍り出そうとしている。 【画像】 自然な風合いで人気のパニカム ナズナはタラスピ、宿根コバンソウはワイルドオーツの名前で流通。また、イネ科に属するものなどはグラス類やグラミネと総称して呼ばれることもある。ネコジャラシとして知られるエノコログサも花材として売られている。これらの多くは「その他草花」と市場で分類され、種類が多様化している。ファッション業界でベストがジレに名前を変えたように、草花も産地や種苗メーカーなどが新たな流通名で、価値を高めている。
葉や実だけ束ねて販売
大手生花チェーンの青山フラワーマーケットでは、2015年から、葉や実を楽しむグリーンだけを束ねた「グリーンミックス」を販売。イネ科のパニカムやバラの実など、季節のものやお薦めの切り花に合うものを3~5種類で束ねる。 切り花数輪と一緒に購入して添え物にする他、日持ちが良いため「グリーンミックス」単体での購入もある。近年は風に揺れるようなナチュラルさのある花材が人気を集めている。放射状に広がる穂が花束に動きを与えるとして、パニカムなどのグラス類が人気だという。
漢字表記で季節感演出
同チェーンでは、カタカナ名の他、チョウジソウ(丁字草)など、漢字表記で販売することもある。運営会社パーク・コーポレーションの高橋玄太切花担当マネージャーは、「季節感のあるものや節句の花材など、和の名前がしっくりくる場合もある」と話す。 花き業界の専門シンクタンク、大田花き花の生活研究所(東京都大田区)によると、園芸品種と雑草の区別を付けるために、新たな流通名を付けているという。名前の由来は和名と英名、学名の三つに大きく分けられる。例えばタラスピは、グンバイナズナの学名だ。
異なる名称調達の課題
需要の増加を受けて国内各地で生産が拡大する中、課題もある。同じ園芸品種でも産地によって名称が違う場合がある。同研究所は「物流問題で中央市場から地方市場への転送需要が増える中、名前の違いが安定的な調達に影響することも考えられる」と指摘し、どこでも通じる名前であることが重要だと提言する。(菅原裕美)
日本農業新聞