『呪術廻戦』真人の敗北が意味する“皮肉” アニオリ演出で下された正義の鉄槌も
真人が虎杖に負けた理由
人間の持つ誰かを呪い、呪い返す感情をよく知っている真人だからこそ彼は人間を、その命を見下す。人間の喜怒哀楽や感情は単なる魂の代謝物にすぎず、命もその肉体も容器に過ぎない。しかし、そんな価値観を持つ真人にも以前、出会ったホームレスの老人と親睦を深めた時があった(小説『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』参照)。順平と出会う直前、彼は高架下で目が焼け爛れているホームレスと出会い、見えないはずの自分が見える上に魂が石のようで、感情の動きがない老人に興味を持つ。そしてともに過ごす時間の中で、人に裏切られた彼が何も恨んでいないことを知った。その際、真人が「この世の中の人間がすべてアンタみたいだったら俺は生まれなかった」と感じていたのが印象的だった。 そして、真人は虎杖の持つ“呪い”に負けた。虎杖はこの世の中でも比較的に良いやつで、誰のことも嫌ったり恨んだりしないような優しい青年だった。だからこそ、そんな人間を歪ませ、生まれて初めて純粋な憎しみと殺意を抱かせた真人の罪は重く、真人によって生まれた虎杖の負の感情も強烈なのである。真人によって植え付けられた怒り、恨み、悔やみ、全てが虎杖のエネルギーとなって蓄積されていく最終決戦。最後の黒閃を受けて空っぽになってしまった真人に対し、「祓う」ではなく「殺す」という言葉を淡々と紡ぐ虎杖。皮肉にも、目の前で自分を冷たく見下す彼の“強い呪い”を生み出したのは、真人が一番よく知るであろう「人が人を憎む負の感情」そのものだったというわけだ。 しかし、そんな彼らの前に登場したのが“偽”夏油。さっさと真人を殺しておけばよかったと、虎杖が悔いる展開が待っていそうだ。
ANAIS(アナイス)