ジャンボタニシ多発傾向 暖冬の影響で平年3倍超 米産地は対策強化
水稲に被害を及ぼすスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)が、各地で多発傾向となっている。農水省が、暖冬で越冬個体が増える可能性を指摘していた中、全国で5年ぶりとなる注意報が出た県もある。産地では、捕獲資材を農家に無償配布するなど、対策を強めている。 佐賀県はジャンボタニシの多発が予想されるとして、6月上旬に注意報を出した。県の調査では、早期水稲では1平方メートル当たり平均生息数が平年の3倍以上の6・8匹。田の水を浅くして貝を動きにくくする、薬剤を散布するなどの対策があるが、県は「田植え後に雨が多いと浅水が難しい。薬剤の効果も下がる」と懸念する。 隣接する福岡県も6月中旬の技術情報で注意を促した。JA筑前あさくらによると、田植え後に水を落とす対応も進むが、「水がたまる箇所はどうしても残る。そこに貝が寄ってきて稲が食害される」(農畜産課)。被害軽減へ、薬剤散布に追われている。
九州以外でも
被害は九州で先行したが、近年はそれより東の地域にも拡大。貝が付着した農機具を介した生息域の拡大などが指摘される。ジャンボタニシ薬剤のメーカーによると、今年も「九州より東で昨年より使用量が増えている」(サンケイ化学)。他のメーカーからも「需要がなかった地域でも販売が伸びている」(ナガセサンバイオ)との声が上がる。 三重県では調査対象圃場(ほじょう)の9・9%で確認され、過去最悪だった昨年の10%と同水準。2015年は0・6%だったが、上昇傾向が顕著になっている。産地は対策に追われる。JA伊勢は今年、捕獲器・餌の1000セットを農家らに初めて無償で配布。JAは「昨年より個体数も発生地域も増えていると感じる。薬剤も散布し、被害を何とか食い止めている」とする。 千葉県も多発傾向だ。6月上旬に県内70圃場で行った調査では、被害株率は平年の3・3倍となる5・03%。県農林総合研究センターは「春の高温で対策する前に貝が活発化し、被害が広がった」と推定。稲に生み付けられた卵は、水中にこそげ落とす必要があるが、「少しでも卵が残れば繁殖する。やるのであれば徹底的に行うべきだ」とする。
日本農業新聞