【内匠宏幸】鋭さを増す岡田彰布の舌鋒と寄り添う新井貴浩「今風VS昭和」最後に勝つのは?
阪神の監督として、通算514勝。藤本定義と並び、岡田彰布がトップに立った。2004年から5年。2023年から2年目。トータル7シーズン目で514勝。この時点で年間70勝以上が確定しているわけで、勝率は歴代監督に比べて高い。 【一覧】阪神監督勝利数ランキング 「そんな記録というか数字は、まったく気にしてないわ。ホンマやで。それよりタイガースを強くすること。阪神の黄金時代をつくること。これよ。そのために力になれるなら…と考えて、監督を受けた」。2年前のオフ。岡田の言葉を思い出す。 だから記録のことには触れない。それよりも7月3日の広島戦の試合後。敗れた広島監督の新井のコメントが妙に気になった。阪神の先発、大竹にまたまたやられた。この2年、1度も攻略できずに10回対戦して8敗目。この事実に「すべて私の足りなさだと思います」と語っている。 私の足りなさ? すなわち、やられているのは監督の責任…ということなのか。新井という人は、そういう感覚の持ち主。いわゆる選手を責めない。選手に寄り添う監督という現代野球の監督の代表格といえる。選手がゲームの中でミスを犯す。それを必ずフォローする。「懸命にプレーした結果ですから。次からまたがんばってくれるでしょう」などなど、個人批判はほとんどない。 こういうタイプの監督が多くなってきた。例えば阪神でいえば前監督の矢野だ。選手のマイナスのことは言わない。最後は「監督の責任だから…」で締める。何度も何度も「責任」というフレーズを使うから「責任の重みが薄くなる」と書いてきた。 戦う選手にとっては、非常にやりやすい監督だろう。内部ではどうだかわからないが、表面上、すべてを流してくれる監督…。叱責(しっせき)されることに慣れない若い選手には居心地がいいわけだ。 反対に逆の監督の代表格は岡田だろう。「世代間のギャップ? そんなん、感じないわ。いまの若い選手の考え方を理解できるし、戸惑うことはない」と就任時に語っていたが、それが埋まりきっていないこともたびたびあった。いくらアドバイスを送り、直接指導しても、改善できない。「どう聞いているんやろな」と幾度となく傾げていた。 それでも岡田は言い続ける。やり続ける。それで嫌われることを、何とも思っていない。これもまた岡田流の寄り添い方といえるのだが…。 今シーズン、岡田の「口撃」はますます過激になっていた。これを選手やコーチは翌日のスポーツ新聞で知る。その繰り返しでここまできた。 寄り添い監督のもと、広島は首位に立つ。結果がついてくればいいのだが、これが下り坂になった時、新井はどう対処して、采配を振るのか。岡田の厳しい要求にこたえられなくなった時、阪神はどう戦っていくのか。対照的な2人の監督。「今風」が勝つのか、「昭和の監督」が笑うのか。興味深い優勝争いになってくれればいい。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)