ガザ侵攻の影響、遠く離れたマレーシアにも 「イスラエル支援」米欧企業抗議で不買運動
イスラム教徒が多数派のマレーシアで、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ侵攻に対する抗議の不買運動が勢いを増している。イスラエルを支援すると見なす米欧企業が標的で、業績に打撃を与えている。近隣国と連携する動きもあり、侵攻が終結しても息の長い潮流になる可能性がある。(共同通信=角田隆一) ▽赤字 「私ができるのはこれくらいだから」。首都圏のスランゴール州の女子大学生ヘバさん(21)は侵攻後、外食や化粧品、身の回り品で米国や欧州企業の製品を買うことを避けている。ソーシャルメディアでさまざまな不買リストが拡散しており、参考にすることもある。 特に標的になっているのは米国系の飲食チェーンだ。スターバックスやケンタッキーフライドチキン(KFC)は経営陣が親イスラエルと見なされた。マクドナルドはイスラエルの現地店が軍に無償で食品を供与したことから、不買が呼びかけられた。 影響は明白だ。マレーシアでスターバックスを運営するベルジャヤ・フードの2023年10~12月の連結決算は売上高が前年同期比4割減で大幅な赤字に。KFCは業績不振のため600以上ある店舗のうち約100店舗を一時的に閉鎖した。
▽経済孤立 運動の大元で理論的な支柱が「BDS」だ。BDSはボイコット、投資撤退、制裁の英単語の頭文字。南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)に対する世界的な不買運動を参考にパレスチナで始まった。 マレーシア支部の代表でマラヤ大のモハマド・ナザリ名誉教授は「(日本企業を含め)イスラエルに進出する企業は全て対象になり得る。イスラエルに投資する国をなくし、経済的に孤立させる」と指摘する。 目標はパレスチナ難民の居住地への帰還、イスラエル軍のヨルダン川西岸など占領地からの撤収を掲げ、侵攻終結が終わりではない。インドネシアやブルネイと連携し、イスラエルのパリ五輪参加停止も仕掛ける。 ▽成長依存 マレーシアの外務省高官は「米国が重要な友好国だとの認識は変わらない」と行き過ぎた反米欧を警戒する。世界6位の半導体輸出国マレーシアはインテル、アマゾンウェブサービス(AWS)など米企業の投資に成長を依存する。
ただBDSはインテルやAWSに加え、政府と関係が深い独シーメンスも批判対象として掲げる。ナザリ氏は「難しい相手だが、どんなことができるか考えている」と話した。