新型Eクラス ステーションワゴンの完成度はやっぱり高い!!! 安心感こそベンツならではの良き伝統だ!!!
現代的なキャラクター
E200のエンジンは、先代譲りの排気量1997ccの直列4気筒DOHCで、これにツインスクロールターボチャージャーを装着して、最高出力204ps/5800rpmと 最大トルク320Nm/1600~4000rpmを発揮する。発進と加速時には、フライホイールと9速オートマチックトランスミッションの間に挟み込まれたISGが17kW(23ps)/1500~2500rpmと205Nm/0~750rpmを発揮して、エンジンの助太刀をする。E200の場合、車重は先代比でおよそ70kg増えている。試乗車はAMGラインパッケージにパノラミックスライディンルーフを備えているため、1910kgもある。 運転してみると、その重さを感じさせない。ぜんぜん重ったるくない。老成を感じさせたW124なんかと較べると(較べる必要はないけど)、ものすごく若々しい。現行の「Cクラスに」も通じる爽快さ、軽快さがある。1997ccの直4ターボは軽やかでスムーズ。基本的に静かでもある。9ATが1500rpm近辺をつねに維持しようとしていることもある。たまさグッと踏み込むと、ぐわっとターボが炸裂する。 低速での乗り心地はタイヤの硬さが若干気になるところではある。AMGラインパッケージを選ぶと前245/45R19、 後ろ275/40R19という高性能スポーツカーのようなタイヤサイズになるから、致し方ない。というか、スポーツカーっぽい乗り心地を期待するひとにとって期待通りの仕立てになっている。とりわけ内房の、もうちょっと具体的には富津館山自動車道を鋸南保田ICで降り、鴨川へと向かう一般道の長狭街道は、路面の一部が凸凹しており、その凸凹路面を40km/h 程度で走っていると、けっこう揺すられる。東京都内だとこういう路面は珍しいから例外だと考えるべき、であるにしても。 高速走行ではしなやかさと滑らかさが心地よい。このダンパー、中途半端な入力に対しては冷たい塩対応でツンツンしている。けれど、本当に必要な、大きな入力に対しては優しいのだ。いわゆるツンデレ、ツンツンとデレデレの二面性を持っている。少女マンガとかラブコメに出てきそうな、その意味できわめて現代的なキャラクターといえる……かもしれない。 もうひとつ、ステーションワゴンとしての改良点は、荷物の出し入れがより楽ちんなように、開口部が8cm広がっていることだ。トランク容量は615リッター、後席の背もたれを倒せば、最大1830リッターのカーゴ・ルームが生まれる。ひとつ下のCクラスのステーションワゴンは490~1510リッターで、筆者的にはこれで十分だと思うけれど、それはあくまで個人の感想に過ぎない。 個人的に不思議なのはステアリングのロックトゥロックが2回転ちょっと、ということはステアリングのギヤ比はきわめてクイックなはずなのに、ゆったり感、安心感をドライバーの私は感じたことだ。技術上の謎は未解明ながら、これだけはいえる。こういう安心感こそメルセデス・ベンツならではの、それこそW124にも共通する、よき伝統である、と。 W124のような伝統派の方には、AMGラインパッケージを選ばない選択もあるはずで、少なくとも、選ばなければタイヤサイズが前後225/55R18になって、中低速の乗り心地のツンツンも優しくなることが期待できる。ただし、その場合、AMGラインパッケージが持っている若々しさが失われる……かもしれない。現在のメルセデス・ベンツが成熟を拒否しているようにみえる理由がそこにある。
文・今尾直樹 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)