アートと空間の妙を楽しむ、京都の新スポットへ。
⼋坂神社と知恩院に隣接し、美しい庭園や桜の名所として親しまれる京都の円⼭公園に、ギャラリー「KOCHI(コチ)」がオープンした。 6月2日まで開催中の初回展示は、アーティストのヒロ杉山による個展「BLACK MOON KYOTO」。黒の絵の具を重ね、シルエットで表現する"ブラックペインティング"のシリーズから、浮世絵師・⽉岡芳年の判錦絵「⽉百姿」と武者絵、セザンヌの絵画をモチーフにした作品を展示している。 「具象と抽象の境界とは?」という問いを提示するブラックペインティングは、ぜひ生で鑑賞したいシリーズだ。シルエットという抽象の中に、筆のタッチや絵の具の盛り上がりで表現された光と影、立体感を感じ取ることで新たな視点が授けられ、モチーフとなる作品への理解もいっそう深まる。
ギャラリーの内装は茶室など和の建築がインスピレーション源。グラフィックアート界をメインに活躍してきたヒロ杉山にとって、和の空間に自身の作品を置くのは初のことで、新鮮な体験だと話す。「内観を見て、ここに似合いそうだと思った作品を持ってきました。月岡芳年の作品は動的で、構図が大胆でおもしろいところがブラックペインティングとマッチします。『黒一色なのに、眺めていると色が浮かんでくるようだ』と感想を伝えてくださる方も。一方、セザンヌの構図は静的で、この手法で表現することにより生け花のような存在感にもなる。海外の方から『禅を感じる』と言われることもあります」。展示作品はすべて購入可能となっている。
ギャラリーの敷地内には日本庭園やコーヒーショップを併設し、憩いの空間としても利用できる。庭園には福島から運んだ見事な一枚岩が横たえられ、その周りに滋賀・安曇川の石が敷かれているのがユニークだ。また、京都を代表する伝説的バーテンダー、西田稔による完全予約制の「BAR 薫」も開業。
カウンター14席のみのバーは、ゆったりと時間に身を委ねる大人のための空間。装飾もドリンクの種類もできるだけ削ぎ落とし、「ここに来たら何も考えなくていい、選択をしなくてもいい、という場所にしたかった」という西田の思いを形にした。店内には、古くからこの場所で使われていた井戸を生かした設えも。東山から流れる清らかな地下水が汲み上げられ、煮沸してドリンクに使われる。