対中国「核対峙の時代」に備える「真の日米同盟」とは 安倍総理の遺産、日本独自の反撃能力「通常兵力の大増強」が必要
仮に中国が、戦術核を日本や台湾に対して使用するとき、米側に反撃する相応の手段がなければ、それ以上のエスカレーションを避けるために、米国は中国と停戦協議を始めるかもしれない。
それでは、日本は「やられ損」になる。中国による対日核攻撃の後に、「日本がいないアジアの平和」が回復する。それは最悪のシナリオである。
米中両国が全面核戦争を戦うことは決してない。しかし、日本のように核戦争の最前線に立つ同盟国としては、途中で自国が「やられ損」にならないよう、同盟国である米国に対し、中国核からの最大限の安全を保障するよう求め続けることが必要である。
そのためには、まず「日本独自の反撃能力」をはじめとして、日本の「通常兵力の大増強」が必要である。
そして、米国の戦術核兵器へ、戦略核兵器へと、日米同盟のエスカレーション・ラダーをしっかりくみ上げて、中国のいかなる挑発、攻撃にも柔軟に対応できるようにしておかねばならない。それが抑止ということである。それが真の同盟管理である。
■兼原信克(かねはら・のぶかつ) 1959年、山口県生まれ。81年に東大法学部を卒業し、外務省入省。北米局日米安全保障条約課長、総合外交政策局総務課長、国際法局長などを歴任。第2次安倍晋三政権で、内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。19年退官。現在、同志社大学特別客員教授。15年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章受勲。著書・共著に『日本人のための安全保障入門』(日本経済新聞出版)、『君たち、中国に勝てるのか』(産経新聞出版)、『国家の総力』(新潮新書)など多数。