52歳の岡田有希子に会いたかった 当時のスタッフに聞く
感性で物事を捉え歌う 竹内まりやと近い面が
レコーディングが始まると、岡田の才能をさらに強く感じるようになったとか。 「やってほしいことを、とにかくパーフェクトにくみ取ってくれるんです。すごい感性で、竹内まりやさんと近い部分があったように思います。まりやさんの提供楽曲が多くなったのも、自然な流れだったんじゃないかなって。お2人とも頭が良い人なんですが、その頭を使って何かをするんじゃなく、感性で物事を捉えたり歌うんです。それと、ちょっとお嬢様っぽい学園にいる素敵な人みたいな印象も似ているかな、と感じました」 パーフェクトにくみ取るとは、どういうことなのだろう。 「たとえば仮歌を渡すとき、こちらからああしてください、こうしてくださいと指導をしないと何もつかみ取れない人っているんですけど、彼女は自分で『こうしたらいいんじゃないか』と感じ取れる人なんです。2曲渡しても、混ざって1色になるのではなくて、ちゃんと歌い分けてくれるんです。竹内さんのほかにもハイレベルなミュージシャンやアレンジャーがたくさん携わっていましたが、そういった人たちが本気を出しても負けない力があったので、作家陣はやりやすかったんじゃないかと思います。やっぱり一流の作家陣が音楽を作ると、それに負けてしまう歌い手もいるんですよ。でも彼女に関しては、そういうのがまるっきりなかったですね」
いろいろな人たちが磨きあげたアイドルだった
今回リリースされる「岡田有希子 Mariya’s Songbook」は、竹内が自身のアルバム「Turntable」でセルフカバーした「ファースト・デイト」「憧れ」「恋、はじめまして」の3曲を含む、岡田に提供した全11曲(作詞のみ2曲)が収録されているという。岡田と竹内の思い出がつまっているようだ。 「有希子ちゃんも、まりやさんの曲が大好きでした。それで、有三さんがとてもお上手なやり方というか、まりやさんにコーラスを頼んでレコーディングへ呼ぶんです。アレンジの松任谷正隆さんもいらっしゃって。そうすると現場で、一緒に作っている感が出てくるんです。そこにいるみんながこの曲を作り上げているんだ、と。松任谷さんとまりやさんも楽しそうに話したり、私のくだらない世間話も聞いてくださって、みんな有希子ちゃんのために一生懸命作っているよね、みたいな雰囲気になれたことが印象に残っています。お互いを尊敬できて、高めあって。有希子ちゃんは作られたアイドルではなくって、ほんとにいろいろな人たちが宝石の原石を磨いて、その良さを引き出したアイドルだったのだと思います」 岡田有希子が忘れられない存在となったのは、その去り方以上に、彼女と彼女を愛した人々が創り出した作品があればこそだったといえる。 (取材・文・写真:志和浩司)