清水咲衣・本田ルーカス剛史の「さえルカ」ペア、ジュニアGPで表彰台めざす「いつか憧れの舞台に」
ゼロからのスタート「道のりが長いな」
ペアの世界に踏み込んだ2人。「道のりが長いな」と本田。「全部ゼロからのスタートなので、テレビで見ている技ができるようになるまでは気が遠くなるぐらい長い期間が必要だなと思いました。ですが、いまやらないといけないことを毎日やっていくことで、それに近づいていけるんだなってことも実感できました」 アイスダンスに比べ、ペアの方がシングルに近い印象があるが、清水は「技術面は全く違いますし、心構えというか、メンタル面でもまた違うところがある。本当に世界が広がりました」と話す。 ブルーノ・マルコット・コーチやブライアン・シェイルズ・コーチはカナダが拠点のため、直接指導を受ける時間は限られる。日本ではキャシー・リード・コーチや、一足早くシニアの舞台で戦っている長岡柚奈、森口澄士組(木下アカデミー)から教えてもらう。特に森口は「日本にいる間のコーチ」(本田)だと言う。ペアの技は危険と隣り合わせ。けがを避けるために的確な指示を出してくれる。女性側の技術もよく理解していて清水にもアドバイスをくれるそうだ。 ツイストリフトやデススパイラルといった、ペアならではの技術はいままさに習得している段階だ。一方、シングルで培ったジャンプの技術と伸びやかなスケーティングは2人の武器になる。男性が女性を高く投げ上げるスロートリプルジャンプや、男女がそろって同じジャンプを跳ぶサイドバイサイドは得点源にできる。
一つひとつ吸収できるものを吸収する
2人は同志社大学スポーツ健康科学部の先輩後輩関係でもある。 清水は今春入学したばかり。「ペアの練習ができて、学校にも通えて、学びたい領域があったので選びました。心理学や栄養学など、スポーツで使える能力をどんどん吸収して、将来スポーツ選手に向けていろいろアドバイスできたらいいなと思います」と話す。4年生の本田は競技に集中するため4月から休学しているが、この3年間で運動生理学やスポーツビジネス、社会学など広く学んだ。 今シーズンのショートプログラム(SP)は「Swan Lake」を継続する。フリーは新しく「Photograph / Clair de Lune」を選んだ。いずれもキャシー・リード・コーチの振り付けで、2人の魅力を引き出す。 この1年はジュニアを舞台に経験を積んでいく。9月初め、第2戦チェコ大会でジュニアGPシリーズデビューを飾った。フリーではリフトで最高のレベル4を獲得し、エレガントな表現で総合4位と大健闘した。2戦目のトルコ大会では表彰台に期待がかかる。 いつかは先輩ペア頼りではなく、自分たちで世界選手権やオリンピックの出場枠を獲得して出場できるようになりたいという思いを胸に秘めている。 「もちろん大きな試合に出たいですし、長岡、森口組にもっと追いつき、いつか追い越せるように頑張らないといけない。ですが、いまは一つひとつ吸収できるものを吸収して、スキルアップしていくことが、そのあとにつながるんじゃないかと思います」と本田。清水も「まずはけがなく、目の前の大会に万全な準備ができるように日々練習していくことが一番の目標です」と先を見つめる。 2人の旅路は始まったばかり。まずは世界で戦うための土台を固める。 「いつか憧れの舞台に」。一歩ずつ、できることを積み重ねた先にその舞台が待っている。
浅野有美