友近のキャラクターづくりが絶妙だ

【ノマドの窓～渡る世間はネタばかり～】 あなたは「道後ストリップ嬢連続殺人」を見たか――という言葉で始めようと思っていたのだが、もうこんなに話題になってしまった今となっては、「当然知ってますよね」という言葉がふさわしいだろう。 巷で噂の「フィルムエストTV」の西井紘輝監督による正味90分間のサスペンスドラマのことだ。 フィルムエストについては、このコラムで1年半前に紹介したが、改めて簡単に説明しておく。先述した西井を中心にした仲間たちが、昭和テイストを意識したコメディー動画を制作し、2014年からYouTubeで公開し始めたチームである。作り物のニュースやコマーシャルをまるで本当にあったかのように作って発表する、つまり「フェイク専門の映像制作会社」のようなものだ。 あえて時代を感じさせる画質や、こだわり抜いた古いフォントのテロップなど徹底しており、昭和感を愛する人たちに支持され、何十万回、数百万回も再生されるほどの反響がある。 そんなマニアックなファンを日々増やしつつあるフィルムエストTVが、総力を結集して完成させたのが「道後ストリップ嬢連続殺人」だ。 今年5月に撮影され、9月13日に公開されたこのドラマは、1カ月経過時点で335万回再生を突破！まだまだその勢いは止まりそうにない。 主演は友近と、漫才コンビ、モグライダーの芝大輔。この2人が取材記者とカメラマンというバディとして、殺人事件の真相に迫っていくという王道の設定。ロケ地は松山市の道後温泉周辺と今治市、伯方島などで、これは2人の出身地が愛媛だから。地元の魅力をふんだんに捉えたショットも地方ロケには欠かせない。ドラマの筋立ては〝あるあるだらけ〟の遊びにあふれている。 で、ここまでの要素だけなら、よくあるパロディーの豪華版でしかないが、西井だからこそ徹底して作り込んだ遊びに要注目だ。 たとえば、このドラマをスポンサー6社が提供していて、それぞれの昭和風オリジナルCMまで作っている。そして、とあるお茶の間シーンに登場するテレビニュース内の映像も、彼が得意とする〝おかしみにあふれた昭和テイスト（あえての素人っぽさ）〟を思い切りぶちこんでいる。 今や、業界筋では知らぬ者のいない存在になったフィルムエストTV、そして西井監督。早くもこの作品のシリーズ化も含めた次回作を期待する声があふれている。未見の方は、ぜひともYouTubeで楽しんでいただきたい。

■東野ひろあき（ひがしの・ひろあき）　1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成（FM大阪「森高千里ララサンシャインレディオ」）、舞台脚本（「12人のおかしな大阪人」）やコンサート演出（松平健とコロッケ「エンタメ魂」）、ライブ企画・構成（「小室等de音楽祭」）、コメディ研究（著書『モンティ・パイソン関西風味』など）。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。