大相撲名古屋場所（ドルフィンズアリーナ）3日目の16日、新関脇大の里（津幡町出身、二所ノ関部屋）が東小結大栄翔をはたき込み、待望の勝ち星を挙げた。この日は7場所ぶりに本場所の土俵に戻ってきた西序ノ口13枚目の炎鵬（金沢市出身、金沢学院大OB、伊勢ケ浜部屋）も2番相撲で東序ノ口13枚目の隈乃花を寄り切って478日ぶりの白星を手にし、「勝つってうれしいっすね」と久々の勝ち名乗りをかみしめた。 【写真】復帰後の初白星を挙げ、報道陣の取材を受ける炎鵬=ドルフィンズアリーナ 　　●「体に染みつけたい」 　自身初の連敗スタートとなった大の里は、大栄翔ののど輪をこらえて突きで反撃し、相手が前に出てきたところをはたき込んだ。 　2日目は東前頭2枚目の若元春を押し込むも決めきれずに逆転負けを喫した。「何事も経験。こういうこともある」と淡々と話していた大の里だが、3日目は大歓声の中で勝利し、「初日が出て良かった」とほっとした表情。「勝つ感覚を体に染みつけたい」と語り、出遅れ挽回へ決意を込めた。 　土俵下の高田川審判長（元関脇安芸乃島）は「白星が一番の薬。今日の一番はでかい。良い方向につながる」との見方を示した。 　　●遠藤、輝敗れる 　西前頭14枚目の遠藤は元関脇若隆景に屈して2敗目。まわしを取れないまま押し出され、「中に入れなかった。しょうがない」と話した。2日目は西前頭13枚目の宝富士を送り出して初白星を挙げた。 　東前頭16枚目の輝は悔やまれる一番で1勝2敗。同17枚目の錦富士に回り込まれ、寄りに屈した。「流れは悪くないが、足を出して動きについていかないと」と反省した。2日目も西十両筆頭の阿武剋に逆転負けを喫した。 　幕下最下位格付け出しの一意（かずま）（金沢学院大附属高OB）は東三段目2枚目の峰洲山を一気に寄り切って2連勝。西幕下3枚目の欧勝海（津幡町出身）は東幕下2枚目の大青山に寄り切られ、星が五分になった。   　　●「勝つってうれしいっすね」　前日取組後に涙　道切り開く決意 　大けがで休場が続き、デビューした7年前と同じ序ノ口からの再出発となった炎鵬は午前9時半過ぎ、この日の3番目の取組に登場した。大きな歓声を背に土俵に上がり、立ち合いから左を差すと、一気に走って勝負を決めた。 　前日の15日は420日ぶりに土俵に上がり、取組後の花道では熱いものが込み上げた。報道陣の取材を受けている最中には、休場中の日々を思い返して目頭を押さえ、「言葉が出ないっす」と語った。 　昨年5月の夏場所9日目、9連敗を喫して帰ってきた部屋で床に倒れ、病院に運ばれた。脊髄損傷と診断されて2週間入院し、一時は寝たきりに。医師からは「日常生活もできなくなる」と早急な手術と引退を求められ、宮城野親方（元横綱白鵬）からは「よくやった」と引退を勧められるような声をかけられた。 　　●金沢駅のパネル復活を目標に 　しかし、小さな業師はあきらめなかった。懸命のリハビリを続け、ようやく土俵にたどり着いた。今の目標は関取に戻り、金沢駅に自身の等身大パネルを再び設置してもらうことだ。 　「どうなっていくか分からない道だけど、自分で切り開き、想像がつかないような未来を作りたい」。幕内経験者として、最も低い地位から巻き返しに挑む。