何かと議論の的になったESG、今後はどうなる
2023年には、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関連した記事をなかなか公開できない時期があった。極右勢力の一部によってESGは政争の具と化し、誰かが「Woke(ウォーク)」的な発言、つまり社会正義に関する「意識の高い」主張を行えば、すぐさま拒絶された。 しかし、今年は様子が違うようだ。略語にうんざりしているだけか、ニュースが一周しつつあるのか、ともかく1年前と比べると、ESGはそれほど論争を呼ぶ言葉ではなくなった気がする。 議論が進んだのだろうか。あるいは、議論を巻き起こしてやろうとの試みをよそに、実業界や投資家界隈ではすでにESGが受け入れられたのだろうか。 英調査会社Verdantix(ヴァーダンティックス)でESGと持続可能な慣行に関する調査を担当するディレクターのキム・ニックルは、一部の企業報告書ではESGという略語を以前ほど見かけなくなったかもしれないが、投資家向け情報では現在も使われていると述べている。金融界では引き続き人気の用語であることの表れだという。 ニックルによると、ヴァーダンティックスがまとめた暫定的なデータでは、「ESGへの投資は収益増につながる」と回答したビジネスリーダーが3分の2近く(62%)に上った。また、「コスト削減につながる」との回答は52%、「リスク低減につながる」という回答は69%だった。 「今後は気候変動や持続可能性といった言い回しがもっと使われるようになると思うが、呼び名は何であろうと、ESGがなすべきことはまだ終わっていない」とニックルは語った。 ESGプラットフォームのMeasurabl(メジャラブル)共同創業者で最高経営責任者(CEO)のマット・エリスは、ESGは一部の人にとっては政治色を帯びた言葉になったが、ビジネス界全体では投資を考える際の検討材料として受け入れられたように感じられると話している。 エリスによれば、ESGはもともと投資コミュニティーや大手年金基金から生まれた言葉だという。いずれも市場がどこに向かうか、将来どういうことが起きるかを予測している界隈であり、投資先の中には炭素排出量や気候変動へのレジリエンス(耐性)の有無がマイナス材料になるものもある。