「君ここロス」を生んだ月9『君が心をくれたから』永野芽郁が視聴者の心を掴んだ「涙のカリスマぶり」
永野芽郁が主演する月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)が3月18日にフィナーレを迎え、“君ここロス”を訴える視聴者が続出している。 【まさにトップ女優…写真あり】永野芽郁 表参道で「ブランド品爆買い」でリフレッシュ姿 このドラマは、主人公・逢原雨(永野)が愛する朝野太陽(山田裕貴)のために“自分の心”を差し出し、過酷な宿命を背負うファンタジーラブストーリー。最終回では、最後の五感である“聴覚”を失う日を迎え、初めて出会った母校に向かう2人。 「私のこと二度と思い出さないで」 という言葉を残して聴覚を失う雨。だが涙にくれる太陽に、再び奇跡が訪れる。 「“奇跡”の案内人・日下(斎藤工)は、五感を差し出した雨の心を受け取って天寿をまっとうするか、みずからの命と引き換えに雨の心(五感)を取り戻すのか選択を迫る。太陽の命と引き換えに、五感を取り戻す雨。やがてパティシエとして成功を収めるエンディングにネット民からも“涙腺崩壊”のコメントが続々寄せられています」(制作会社プロデューサー) 今作は異国情緒あふれる長崎を舞台に、若い世代から支持される純愛小説の名手・宇山佳佑が手掛けるオリジナル脚本を、映画『ミステリと言う勿れ』などで知られる松山博昭監督が演出する注目作。しかし連ドラが始まった当初は、五感を失っていく重苦しい展開に耐えきれず、離脱する視聴者もみられた。 それでも月9の王道「恋愛ドラマの復活」に真っ向から挑む姿勢は、ある意味清々しくもあった。中でも悲劇のヒロイン雨を演じる永野芽郁が流す涙には、毎回心を奪われた。 「雨は太陽のために、味覚、嗅覚、触覚、視覚と次々に失っていく。その哀しみを演じるにあたって、永野は『涙を自在に操っていた』と共演する山田が証言しています。しかもただ泣くのではなく『涙をこらえることでドラマを見る人に感情移入させて、泣けるように余白を作る』。 そんな工夫も凝らしていました。そのために涙を流すシーンでは『頑張って水をたくさん飲んでいた』といった撮影秘話も、永野自身が明かしていました」(制作会社ディレクター) 涙を自在に操る永野は、令和に現れた“涙のカリスマ”なのか。 元々永野芽郁といえば、“素の自分”で真っ向勝負するスタイルで頭角を現した。 「’15年、原作漫画を読みヒロインと自分が似ていることから、あえて役作りをせずにオーディションに挑み、映画『俺物語!!』のヒロイン役を獲得。さらに高3の時、朝ドラ『半分、青い。』(NHK)でも“素”のまま自由に演じられる鈴愛役に挑戦。『スズメを見つけました。永野さん、遠くまで飛んでください』と脚本家・北川悦吏子に言わしめ、国民的女優の座を勝ち取っています」(前出・プロデューサー) しかし、その翌年出演したドラマ『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)では、心境の変化が訪れる。 「今作は、高校卒業を前にして菅田将暉演じる担任教師が生徒を人質にとり“最後の授業”を行う学園ミステリー。ここで永野は“素”の自分とはまったく違う内向的な生徒役に挑戦して新境地を開拓。『演技を超えた本物の何かになる瞬間がある』と菅田に絶賛されています。 さらに’21年、戸田恵梨香とW主演したドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系)では天然の新人警官役に挑戦。翌年には衝撃の問題作、映画『マイ・ブロークン・マリコ』に主演。心が震えるほどの魂の叫びを熱演。自身も『またひとつ転機になる作品と出会った』と話しています」(前出・ディレクター) 以後も、演技の幅を拡げた永野の快進撃は止まらない。日本アカデミー賞でも’22年、映画『そして、バトンは渡された』で優秀主演女優賞。’23年映画『母性』、’24年映画『こんにちは、母さん』で優秀助演女優賞を獲得。24歳にして、すでに大物女優の風格すら漂わせている。 今作で令和の“涙のカリスマ”として、その名を轟かせた永野芽郁。中でも印象に残っているのが、最終回のラスト。 大輪の赤い花火を見上げ、微笑みを浮かべながら流す涙こそ、今作で初めて見せた“希望の涙”。宇多田ヒカルの主題歌『何色でもない花』に浮かび上がる雨の朱色に染まった満面の笑顔、そして溢れる二筋の涙。この得も言われぬ美しさが頭から離れないのは、私だけではないだろう――。 取材・文:島右近(放送作家・映像プロデューサー) バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版
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