「ボロ家報道」「新入社員の大量辞退」で大炎上のいなば食品、それでも「不買運動」が盛り上がらない理由。キリンはあれだけ騒がれたのに一体どこに違いが?
■思い出される、キリン不買運動 食品メーカーと「不買運動」と聞いて思い出すのは、つい数カ月前に起きた缶チューハイ飲料「キリン 氷結無糖」をめぐるものだ。経済学者の成田悠輔氏を広告に起用したところ、同氏による過去の発言に批判的な人々が、SNS上で「#キリン不買運動」のハッシュタグ付きで、抗議の投稿を拡散。結果としてキリンは、広告展開を取りやめた。 不買運動が企業に与えるダメージは、抗議による不買での「直接的な売上減」にとどまらず、企業イメージの低下による「間接的な売上減」も招くことにある。SNSによって不買運動が可視化されれば、メディア側もこぞって記事として取り上げる。
企業側の声明を待たずとも、抗議の声がでていれば、それだけでニュースバリューはあるため記事化に値する。また、公式コメントが出されれば、それもまた記事にできる。著名人が反応すれば、そちらも――。 そもそも「抗議」のように感情へ訴える、衝動的な事案は、読者の興味を引きやすい。そのうえ「何番煎じ」でも味わえると来れば、媒体側が重宝する理由もわかるはずだ。こうしたループを繰り返すうちに、火に油が注がれ、ネット空間は焼け野原となってしまうのが世の常だ。
■いなば食品では不買運動が起きない3つの理由 しかしながら、今回のいなば食品では、不買運動が盛り上がっていない。その背景には、3つの理由があると筆者は考えている。 (1)従業員の待遇が争点となっているため (2)「CIAOちゅ~る」が唯一無二な商品であるため (3)「CIAOちゅ~る」が子会社の商品であるため それぞれ見ていこう。最初の理由としては、今回の報道が、従業員の待遇をめぐるものだということが考えられる。新入社員をはじめとする従業員に、十分な配慮がされるためには、そこへ資金が投入される必要がある。
文春報道では「募集要項からの給与ダウン」もスクープされており、不買運動により売上減につながれば、現場社員がさらに苦しくなるのではと、不買運動をためらっている可能性は考えられる。 2つめは、主力商品であるキャットフード「CIAO(チャオ)ちゅ~る」が唯一無二であること。SNSでは「ネコからの反発が強そう」「類似商品だと拒否される」といった反応も多々見られ、もはや嗜好品にとどまらず、生活必需品になっていると思われる。