【視点】米事務所問題 県政の体質改善を
実態は株式会社の沖縄県ワシントン駐在事務所が長年、違法状態で運営されていた問題で、県議会自民、公明、維新の3会派はプロジェクトチームを設置し、玉城デニー県政を徹底追及する方針だ。 プロジェクトチーム座長を務める自民党の大浜一郎県議は18日の記者会見で「ガバナンス(統治能力)が全くなっていない。県政としてみっともない」と厳しく批判した。 この問題は、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対という政治目的を達成するためなら、違法行為や脱法的行為もある程度は容認される、と「オール沖縄」県政が考えている可能性を強く示唆する。いわば県政の体質を露呈したと言っていい。 県政トップ自ら襟を正し、体質改善に取り組まなくてはならない案件だ。今年の県議選で多数派となった野党は百条委員会の設置を検討している。今こそ県政のチェック機能を果たさなくてはならない。 この問題は2015年、当時の翁長雄志知事が辺野古移設反対を米国内でアピールするため、ワシントン駐在事務所の設置を決めたことが発端だ。 県職員である駐在員のビザでは辺野古移設反対を訴えるロビー活動ができず、県は100%出資した株式会社を設立した。 社長、副社長の肩書きで駐在員を派遣し、企業の転勤者向けに発給される「L1ビザ」を取得した。県の出先機関が株式会社を偽装する時点で、既に脱法的な行為が始まっている。 株式は公有財産として登録されず、事務所の実態が株式会社であることの公表も説明もなかった。県が出資する法人の経営状況を議会に報告する義務を定めた地方自治法違反、県職員が企業の役員を兼業する際に必要な営利企業従事許可を取得していない地方公務員法違反が指摘されている。 県によると株式会社設立の経緯を記した公文書が残っておらず、担当者間の引き継ぎもされていないため、事務所が株式会社であったことは玉城知事や県幹部も最近知ったという。隠蔽の意図を疑われても仕方がない。 問題の一つは、誰が株式会社設立を決定したかである。事務所設置は当時の翁長知事の肝いりの政策だった。知事自身がこの件を知っていたのか。あるいは知事の政治的アピールを優先させるため、当時の県幹部が忖度(そんたく)して主導したのか。 県当局は県議会で、株式会社への出資金千ドルは課長決裁の金額と答弁したが、まさか当時の課長にすべてを押しつけるつもりではないだろう。闇の中のままでは済まされない。 事務所には年間約1億円の経費が計上されてきた。設置当時の経緯がこのように不透明である以上、事務所経費の使途についても疑念が生じるのはやむを得ない。 辺野古移設工事は進展しており、自民党など野党は事務所の設置意義そのものを疑問視してきたが、以前は与党が多数だったため県議会で事務所経費の予算は認められてきた。 だが現在は野党が多数となり、来年度の事務所経費の予算は認められない公算が大きい。県議会での今後の審議にもよるが、これだけの問題が浮上している以上、事務所廃止の流れは当然である。