なぜアメリカは最強国家になったのか…「ゲームに勝つのは、ルールを作った人」という覆せない定理
■ゲームはルールを作った人が勝てる ゲームの話の延長で、アメリカの強さの理由について、少しお話ししておきます。アメリカが強いのは、ルールを自分たちで決めているからです。 ゲームは、ルールを作った人が勝てます。『ハゲタカ』という小説でも書きましたが、グローバルスタンダードという概念をバブル経済崩壊後の日本に持ち込んだのは、アメリカです。その結果、日本の金融機関がバタバタと倒れました。 「グローバルスタンダード」、つまり世界共通の標準。とても響きのいい言葉ですが、実際は「アメリカンスタンダード」です。日本だけでなく、困惑させられた国が他にもたくさんありました。 アメリカは大変賢い、利に敏(さと)い人たちの国なので、ルールを作ったうえで、すべてを奪っていったのです。 ゲームにおいても、前提が大事です。たとえば、「金融の世界を新しくするために必要なのは『フェア』です」と言い、「フェアとは何か」を自分たちで定義する。 そういう中で戦うためには、ゲームのルールが決められてしまう前の段階で「ちょっと待ってください」と言わなければならない。「それは、私たちには認められないルールだ」と粘る必要がある。 ■「ここがよくわからない」と問い直すことが大切 しかし、たいていの場合、アメリカコンプレックスのせいもあって日本人は弱腰です。戦う前に、負けてしまっている。 この状況を打開するには、国民性というところからのボトムアップが必要です。 小学生くらいから鍛えるしかない。もちろん、小学生に騙し合いをさせたいわけではありません。活発な議論をしてほしい。議論の際に必要なのは、まず相手の話を聞く姿勢で、その上で、「ここは賛成」「ここがよくわからない」「ここは受け入れられない」と伝える力を磨いてもらいたいと思います。 とりわけ大事なのは、「ここがよくわからない」というリターンを返すことです。 相手の意図を読んで、語っていないところを見抜き、それについてもっとちゃんと語ってほしいと求める。 このトレーニングのためにも、クリスティー作品は非常に役に立ちます。 ---------- 真山 仁(まやま・じん) 小説家 1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業後、新聞社に入社。フリーライターを経て2004年『ハゲタカ』(講談社文庫)でデビュー。以後、現代社会の歪みに鋭く切り込むエンタテインメント小説を精力的に発表し続けている。著書に『墜落』(文藝春秋)、『シンドローム』(講談社文庫)、『ブレイク』(角川書店)、『神域』(文春文庫)、初の本格的ノンフィクション作品『ロッキード』(文春文庫)、『当確師 正義の御旗』(光文社)などがある。 ----------
小説家 真山 仁