4.5億円ダウンの杉内を待ち受けるもうひとつの“地獄”
巨人の杉内俊哉投手(35)が10日、都内で契約更改を行い、4億5000万円ダウンの推定5000万円でサインした。プロ野球史上最大の下げ幅だ。今季は、シーズン途中に股関節を悪化させてチームを離脱、17試合に先発し6勝6敗、防御率3.95の不甲斐ない成績で終わった。シーズン終了後、保存療法でなんとかもたせていた股関節の手術に踏み切ったが、復帰予定は、来年の夏以降。ソフトバンクから、4年20億の大型契約でFA移籍。3年連続2桁を記録、33勝を挙げてチームのV3に貢献したが、今季の成績とリハビリに来季の半分を費やすことになって、自ら基本ベースのギリギリまでの減俸と出来高である程度まで戻せる契約を申し出た。過去、4年で、最高の数字だった2012年の24試合、163イニングを投げ、14勝4敗、防御率、2.04の数字が、出来高の最高点だと考えられている。おそらく、試合数はよくて半分に落ちるから、設定された出来高の最高点をクリアしたとしても3億円止まりだろう。 前例のないリハビリ、そして数字のクリア……と共に杉内を待ち受けるもうひとつの難関がある。それが今年の推定5億円の年俸にかかってくる税金の支払いだ。 個人事業主のプロ野球選手の場合、大きく所得税、住民税、消費税の3つを納税することになる。しかも、今年度から、高額所得者の所得税率が、1800万円以上の所得に対して40パーセントだったものが、4000万円以上は45パーセントに改正された。ここに住民税の約10パーセント、消費税の8パーセントが加算される。今季の推定5億円に対して、税金の支払いは、推定で3億円強。20パーセントの経費は、認められるとしても、年俸5000万に落ちてしまった来年に、杉内は、給料以上の税金を支払わなくては、ならなくなるのだ。 契約金を関係者に配ってなくなってしまった新人選手や、引退した高額年俸の選手が、収入がガタっと落ちる翌年に、税金の支払いに苦しむ話は、よく聞かれる。中には、納税のために借金を重ねたり、破産寸前に陥った元プロ野球選手も少なくない。 元千葉ロッテの里崎智也氏も、「僕も、徐々に給料が下がっていく前に退団したので、正直、税金を払うと、去年の給料は実質ゼロと同じでした。ただ、高額年俸の選手は、毎年、高額納税をしているわけですから、普通、納税用にお金を置いています。大雑把に言えば、給料が振り込みされる時点で、源泉が引かれ、消費税はプラスされるので、実質、残り2割程度の税金を支払うことになります。中には、翌年の納税を考えずに散財してしまう人もいるかもしれませんが、これだけ長くプレーしている杉内なら、そこは、ちゃんと税金用に残してあるんじゃないですか(笑)」と言う。 引退後の納税や、セカンドキャリアの準備金などに困らないように、プロ野球選手会には利回りの多少いい年間500万円を積み立てる共済金の制度があり、里崎氏は、そういう共済金などもうまく使って、引退後の今季の納税を切り抜けたという。 杉内にとって、財布の中身を知られるのは、余計なお世話かもしれないが、史上最大の4億5000万円ダウンには、いくら国民の義務とはいえ、納税という、さらなる苦しみも待ち受けている。それらが杉内の再起へのモチベーションとなればいいのだが……。彼らが、ファンに支えられ腕一本で血と汗を流しながら稼いで納める、まさに“血税”を政治家の人たちには無駄に使ってもらいたくないと切に願うのである。