サクランボの枝でニット製品 山形の企業が連携し開発 ポロシャツとカーディガン、来年の販売目指す
山形市の広告代理業エーディーバンクが、山形県特産サクランボの木で剪定(せんてい)された枝を原料に用いたニット製品を開発した。2025年の県内果樹栽培150周年記念事業の一環として県から委託され、同県寒河江市の紡績・ニット製造の佐藤繊維が協力した。来年の販売開始を目指す。 ニットはポロシャツとカーディガンで、枝の発色を生かしたクリーム色を基調にする。サトウキビの搾りかすを衣料品に加工する沖縄県の企業の事例をヒントにしたという。価格や販売場所は未定。 エーディーバンクは剪定枝を用いた「和紙糸」を手がける。山形県内のサクランボ農家から集めた枝を砕いてパウダーにし、麻と混ぜて和紙に加工。薄く裁断してよりをかけ、糸にする。佐藤繊維は糸を織り上げる工程を担当。和紙糸を横糸に、綿を縦糸にしてニットに仕上げる。 和紙糸を使ったニットは細く丈夫で、ウールと比べ、柔らかい風合いになるという。 エーディーバンクと佐藤繊維の関係者が10月31日、県庁を訪れ、吉村美栄子知事に開発状況を報告した。佐藤繊維の佐藤正樹社長は「地元の農家が育てた原料を使う意義は大きい」と強調。吉村知事はカーディガンを試着し「柔らかい自然な色。軽くて着心地がいい」と感想を述べた。 エーディーバンクは剪定枝の和紙や和紙糸の需要を高めようと、県内企業に活用を呼びかけている。名刺やノート、スリッパなどを想定している。 大城誠司社長は「廃棄されていた枝に商品価値が生まれれば、持続可能な農業に貢献できる。活用の幅を広げたい」と意気込みを語った。
河北新報