知床 人と自然在り方探る 斜里で国立公園60周年でシンポ
知床国立公園が成立して60周年を迎えた1日、北海道オホーツク管内斜里町公民館夢ホール知床でシンポジウムが行われた。直木賞作家の河﨑秋子氏(別海町出身)の基調講演やパネルディスカッションなどが行われ、海外客の増加やSNSの発達で環境が大きく変化していく中で、今後の〝知床〟の在り方について意見を出し合った。 知床は流氷がもたらす海の恵みや、山陸ともに豊富な生物多様性から、国内22番目の国立公園として登録。2005年には世界自然遺産に登録され、来年には20周年を迎える。シンポジウムには約300人が出席した。 河﨑氏は「100年先まで続く自然と人間のあり方」という題で講演。直木賞受賞後、放牧牛を襲うヒグマ「OSO(オソ)18」に関する質問を多く受けたことを通じ、「ヒグマの生活圏で生活する人と、外部の人では見え方が変わってきていると実感した」と語った。一方で、過度に感情的な訴えは避けるべきだとし「それぞれの自然に対する価値観を固め、知床以外に住む人たちに地道に発信して、地域側の価値観を積み重ねていくことが重要になってくる」と話した。 パネルディスカッションでは「知床らしさから考える人と自然の距離」というテーマで意見交換。パネラーとして出席した、羅臼高校3年の石井渓人さんは、ユネスコスクールとして活動する同校の取り組みを紹介し「最近、多くの人が自然を怖がらなくなり、自然をコントロールしようとしていると感じる。自然の力を体感して、恐れることも重要なのではないか」と主張した。知床財団の秋葉圭太氏は、外部資本ではなく、地域住民が主体的に自然保護に取り組む重要性を強調した上で「外部からの助言も失ってはいけない」と語った。今後の課題については、観光客が望む体験やアクティビティーが限定的である現状とリスク管理を挙げ、明確なルール設定の必要性などを説いた。