センバツ高校野球 大垣日大、8強届かず 最終回、粘りの1点 /岐阜
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は第8日の27日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2回戦を行い、県勢の大垣日大は星稜(石川)と対戦した。序盤から星稜の強力打線に打ち込まれる展開となったが、五回に米津の適時打で1点を返し、九回にも1点を加える粘りを見せた。試合は2―6で敗れ、8強入りは逃したものの、夢の舞台で熱戦を繰り広げた選手たちに、アルプススタンドからは惜しみない拍手が送られた。【熊谷佐和子、中田博維、浅野翔太郎】 「相手の打者全員がどんどんフルスイングで振ってくると感じた」(西脇主将)という星稜打線は手強かった。一回に相手の左前打や四球でピンチを迎え、先制を許すと、三回には内角を狙った五島のスライダーが、真ん中低めに入り、2点本塁打を浴びた。「本塁打までいくと思っていなかったが、打者が上手に打球にスピンをかけてうまいなと思った」と悔しさをにじませた。 四回、先発の五島に代わり、山田渓がマウンドに上がると、母薫さん(52)は「ドキドキした」と緊張した様子。その後は「一球一球、一緒に頑張るという思いで応援している」と、ストライクやアウトを取るたびに拍手を送った。 反撃の口火を切ったのは五回。2死一、二塁の好機で、米津がスライダーを「強い打球で次につなげよう」と振り抜き、1点を返す左前適時打を放った。スタンドでは保護者らが両手に持ったメガホンを鳴らして沸き上がった。米津の祖父、愛甲重夫さん(73)は、1月に死去した祖母の孝子さんの元を、亡くなる直前に米津がユニホーム姿で訪れた際の写真を持参して応援していた。安打が出ると「よく打ってくれた。おばあさんも喜んでくれたかな」と感無量の様子だった。 八回から出場した伊藤のおい、山本陽大ちゃん(1)と、長沢のめい、中島花音ちゃん(1)は、チアリーディング同好会の保護者が作ってくれたというベビー用のユニホーム姿で応援した。九回、先頭の伊藤が安打で出塁すると、陽大ちゃんの母親で伊藤の姉の山本みゆさん(24)は「打ってくれると信じていた」。その後、長沢の左方向への二塁打で2点目を挙げると、姉の中島栞菜さん(22)は「少しでも試合に出られてうれしい」と、娘の花音ちゃんを抱えながら喜んだ。 しかし、終盤の追い上げも及ばなかった。最後まで粘り強いプレーを見せたナインは、温かい拍手に送られて甲子園を去った。 ◇卒業生も生演奏 ○…大垣日大の三塁側アルプス席からは、生徒や保護者ら計約335人が、声援を送った。吹奏楽部の生演奏には現役部員のほか、この春に卒業したOBやOGも応援に駆けつけた。今春卒業したばかりの羽田鴻さん(18)=写真左=は新型コロナウイルスの影響で、2年生の時は野球の応援で演奏できる機会がなかったという。「甲子園では相手の演奏にも気迫があり、こちらも『勝たせるぞ』との気持ちになる」と話し、担当するスーザフォンの音色をスタンドに響かせた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇「夏はエースとして」誓う 大垣日大・山田渓太投手(2年) 只見(福島)との初戦では中堅手として出場。その試合で完投したエース五島の姿を見て「マウンドに立ちたい」との思いが強まった。 四回、先発の五島から「山田らしいピッチングをすれば抑えられる。思い切っていけ」と後を託され、「得意の直球で押していこう」とマウンドに上がった。緊張もあったが、登板してすぐ、自己最速タイの142キロを記録し、先頭打者から三振を奪った。しかし、積極的に振ってくる星稜打線に捉えられ、この回2失点。「直球で対抗しようと思ったが、甘いところに入って打たれた。細かいコントロールが大切だと思った」と悔やんだ。 六回以降は無失点で切り抜け、九回には2死二塁の好機で打順が回ってきた。「低い打球でなんとかつなごう」と打席に入ったが、右飛に打ち取られてゲームセットとなった。 1月中旬から2月末まで右ひじをけがし、投球練習できない時期もあった。「ブルペンでは毎日が『競争』。特に自分は投げられていなかったので、隣で投げている選手が褒められると悔しい気持ちがあった」と振り返る。五島から尋ねられて、フォームの体重移動や体幹の使い方を教える一方、五島の姿からはマウンドでの振る舞いや、ピンチでも動じない姿勢を学ぼうと努めた。ベンチ入りした投手陣4人で切磋琢磨(せっさたくま)して迎えた甲子園だった。 今大会の背番号は10。夏に向けてエースを目指す気持ちがあるか問われると「もちろんあります」と力強く答えた。「苦しい場面になるほど直球に頼ってしまう」との反省から、今後は自信の持てる変化球を習得し、「投手としてこの甲子園に戻ってきたい」と誓った。【熊谷佐和子】