JPモルガンのチーフ・グローバル・ストラテジスト、デビッド・ケリー。

好調な経済データとFRBによる大幅な利下げで株価指数は急上昇した。 しかし、JPモルガンのチーフ・グローバルストラテジストであるデビッド・ケリーによると、市場がソフトランディングを目指す中での潜在的なショックが投資家にとってより大きなリスクをもたらすという。 彼は、アメリカ人はリスクを取らず、資金を成長株からバリュー株に移すべきだと主張している。 JPモルガン・アセット・マネジメント（JPMorgan Asset Management）のデビッド・ケリー（David Kelly）は、「好調な経済データと2024年9月の大幅な利下げが株式市場において強気の見方を助長しているが、投資家はさらなるリスクを追加することに慎重であるべきだ」と指摘している。 JPモルガンのチーフ・グローバル・ストラテジストであるケリーは「ソフトランディングへの期待が、まさに今がその時ではないにもかかわらず、よりリスクの高い資産に投資するようアメリカ人を促している」と言う。 「私はこれが株式市場にとってプラスであるとは考えるものの、株式市場がソフトランディングを見込んでいるという事実について、ますます不安を感じている」 彼は、市場がソフトランディングを見込むにつれて株式や資産の価値が上がり、これによって、市場に何らかのショックが加わると資産価格が急落する可能性があると話す。 「市場は大きく上昇し、より歪んだ状態になっている。そのため、評価が高くなり、リスクが増している」 同時に、平均的なアメリカ人の富は急増している。アメリカ連邦準備制度理事会（FRB）のデータによると、アメリカの世帯の総資産は過去5年間で約50兆ドル（約7424兆7750億円）増加しているという。つまり、ほんの数年前までは退職後の余裕などなかった多くの中所得世帯が、今では余裕を持てるようになったケリーは説明する。 その結果として、投資家は必要以上のリスクを負うべきではないという。 「彼らはリスクを抑えるべきだ。やりたいことをやるのに十分な資金があるのなら、リスクを増やす必要はない」 ケリーは、急騰する成長株に資金を固定しておくことについて特に慎重だ。 「私が論理的に投資家はリスクを少し減らすべきだと考えているまさにその時、彼らは受動的にリスクを増やしている状況だ」 代わりに、投資家にポートフォリオのバランスを再調整し、成長株からバリュー株、国際株、オルタナティブ資産へと資金を移すことを彼は勧めている。 市場は長い間、ソフトランディングに向かっている傾向にあり、10月4日に発表された雇用統計はその見方をさらに強固にしたとケリーは話している。失業率は4.2%から4.1%に低下し、非農業部門の雇用者数は25万4000人増加して、約15万人という予測を大きく上回った。 この雇用者数の報告は、2024年11月の大幅な利下げの期待をほぼ失わせた。シカゴ・マーカンタイル取引所（CME）の「FedWatch Tool」によると、投資家は50ベーシスポイント（0.5%）の金利引き下げが行われる可能性を最初の33%から1%未満に急速に引き下げた。 しかしケリーは、データには誤差の余地があるため、2024年9月の雇用は実際よりも弱く見え、10月の雇用は実際よりも強く見える可能性があると認めた。 それはともかく、彼はこの報告がアメリカの労働市場が健全で力強いことを裏付けるもので、経済が「非常に素晴らしいソフトランディング」の軌道にあることを証明するものだとしている。