麒麟・川島明は今や「スーパーMC」の域 芸の弱点克服のために磨いた“ワードセンス”が最大の武器(ラリー遠田/お笑い評論家)
【2025新春「笑」芸人解体新書】#1 2024年のお笑い界で最大のニュースと言えば、松本人志が活動休止に入ったことだ。ここまでほぼ丸1年間、彼はテレビなどのメディアから姿を消していた。 【写真】「もう一本帯番組」の文字を掲げる麒麟・川島明 その結果として、空いた穴を埋めるように下の世代の芸人がどんどん台頭して、勢いを増してきた感がある。 数多くいる吉本興業の中堅芸人の中でも、昨年さらに飛躍したのが千鳥、かまいたち、そして麒麟の川島明である。いずれも実力派のMCとしてテレビでは欠かせない存在となり、幅広い世代に支持されている。 川島は低音の美声の持ち主だが、芸人としては声が通りにくいという欠点もあった。ただ、彼はその弱点を克服するために、言葉の切れ味をどこまでも鋭くすることを目指した。その結果、ズバッと一言で笑いを取る「ワードセンス芸」の第一人者となった。 芸人でありながら、落ち着いた口調で話すことができて、見た目からも品の良さを漂わせている彼は、お笑い色の強い番組もそうではない番組も、幅広く対応できるスーパーMCとなった。 そんな彼の代表作と言えるのが2021年に始まった「ラヴィット!」だ。最新のニュースを報じるワイドショー番組が並ぶ朝の時間帯に、完全なバラエティー路線の帯番組をTBSが立ち上げた。そして、川島をMCにして芸人中心の番組作りをすることで、この時間帯のテレビに笑いを求めていた視聴者の支持を得て、独自のポジションを確立した。 「ラヴィット!」では、多くの芸人やタレントがゲストとして出演している。その中にはテレビに慣れていない人やマニアックな芸風の芸人もいる。 しかし、誰が何を言っても、どんなことが起こっても、川島がフォローに回って一言添えることで、確実に面白くすることができる。出演者たちも彼の実力を信頼しているので、ほかの番組以上にのびのびと振る舞うことができる。それが番組全体の空気を和やかにして、ますます笑いが生まれやすい雰囲気ができる。 「アメトーーク!」の「ワードセンス憧れ芸人」という企画でも、川島の鋭いワードセンスは多くの芸人から憧れと尊敬の対象になっていた。 ワードセンスという武器の威力が衰えることがない限り、川島の快進撃はこのまま続くだろう。(つづく) (ラリー遠田/お笑い評論家)