デブリ取り出し年度内断念 福島第1原発 東電、延期3度目 堆積物除去作業が難航
東京電力は25日、福島第1原発2号機の溶融核燃料(デブリ)について、今年度中に予定していた取り出し開始を断念し、今年10月までの着手を目指すと発表した。ロボットアームの投入口となる原子炉格納容器の貫通部にたまる堆積物の除去作業が難航している点に加え、アーム開発の遅れなどが原因。東電はアームよりも細いパイプ型装置に切り替えて取り出しを試みる方針。取り出し延期は3度目で、当初計画から既に3年ほど遅れている。東電は「今後の廃炉工程への影響はない」とするが、廃炉作業の困難さが改めて浮き彫りとなった。 東電は格納容器の貫通部からアームを投入し、数グラムのデブリを採取する計画だった。ただ、貫通部は多量の堆積物に覆われ、除去作業に時間がかかっていた。さらにアームの制御プログラムに改良が必要になった。これらを踏まえ、安全に作業を進めるためには工程変更が必要と判断した。パイプ型装置は過去の調査での使用実績があり、堆積物が完全に除去されていない状態でも使えるが、原子力規制委員会の認可が必要になる。
東電は当初、2021(令和3)年に作業を始める計画だったが、新型コロナウイルスの影響による準備の遅れやアームの改良などで2度延期していた。政府と東電が定める廃炉工程表「中長期ロードマップ」による取り出し開始時期は「2021年内」のまま改定されていない。東電の小野明副社長・福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は25日の記者会見で、「工程では2030年以降の本格的なデブリ取り出しを見込んでおり、2号機からの取り出し遅れは全体には影響しない」と説明。改定については「われわれがどうこう言うものではなく、国の方で判断されるものと考えている」とした。 福島県原子力安全対策課の担当者は「東電は県民に対して作業の進捗(しんちょく)をより丁寧に発信すべきだった」と指摘。「格納容器内の作業にはリスクが伴う。安全最優先で対応してほしい」と求めた。 東電は2号機のデブリに含まれる放射性物質などを分析し、今後の本格的な取り出しにつなげる。デブリは1~3号機を合わせて約880トンに上り、廃炉作業の最難関とされる。