【毎日書評】コピーライターはなぜハッとすることばを紡ぐことができるのか?その思考の秘密
『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』(堤藤成 著、祥伝社新書)の著者は、ことばで紡ぐことは自分の人生を前に進めるために、もっとも気軽に取り組める具体的な「活動」だと述べています。 自分の思索の移ろいをグラデーションのように楽しみにしながら、活動の最小単位である「試み」を行なうのです。 そう考えると言葉が持つ「軽さ」こそが、最小単位の「試み」として魅力的に感じられるようになります。なぜなら体を物理的に動かす「行動」はどうしても、重くなるからです。(「はじめに」より) その重い「行動」の前に、まず思考を言語化し、ことばを紡いでいくことで小さな「試み」を行なう。具体的な行動に動き出す前に、ことばを紡いで予行演習を行なう。そうすれば、自信を持って一歩を踏み出せるようになるというのです。そして、そんな思いを軸に本書は書かれているわけです。 読んでいただきたい読者としては、「言葉を紡ぐこと」に苦手意識を感じているあなたです。 だけど苦手意識を感じている人は、本当は人一倍、「言葉を紡ぐ」ということに憧れている人でもあります。それはかつての僕なので、僕が一番よく知っています。 そして「言葉を紡ぐ楽しさ」を伝えるということは、「コピーライターはなぜ、ハッとする言葉を紡げるのか?」というよく聞かれる疑問に答えることかもしれません。(「はじめに」より) 「ことばを紡ぐ楽しさ」を実感するためのきっかけを見つけるために、きょうは序章「言葉の散歩に、出かけてみませんか?」に注目してみたいと思います。
ことばが先か、思考が先かーー「仮定する」理論
言葉が先か、思考が先か。 言葉を紡ぐから、想いがめぐるのか。 想いが巡ることで、言葉が紡がれるのか。 (17ページより) このような「〇〇が先か、△△が先か」という文章が思い出させるのは、有名な「ニワトリタマゴ」。卵から鶏が生まれるのか、鶏から卵が生まれるのか、どちらが始まりなのか判断しづらいことの喩えとして使われるものです。 しかし、この言葉をじっくり観察してみると、「タマゴが先か、ニワトリが先か?」と言う人はいても、「ニワトリが先か、タマゴが先か?」と言う人はいないことに気づきます。 また、略語で語る場合は「ニワトリタマゴ」と言う人はいても、「タマゴニワトリ」と言う人はいません。それは僕たちが意味を超えた語感として、「〇〇が先か?」という場合は短く「卵」を先に言いたいし、略語ではゴロッとした「ニワトリ」を先に言いたい生き物だからです。(17~18ページより) 些細なことだと感じられるかもしれませんが、こうして仮定し、仮説を持つことから“コピーライター的なものの見方”が生まれると著者はいうのです。(16ページより)