“職業差別”発言で辞任の「川勝知事」に学ぶ…世の管理職が「スピーチで絶対にやってはいけない」たったひとつのこと
ただただ「一緒に頑張る」
〈あなた達は過酷な就職活動を経て入庁してくれた貴重な人材です。その優秀さには感服いたします。ですから、その高い能力を静岡県のために存分に発揮し、一次産業・二次産業・三次産業すべてが繁栄すべく日々研鑽を続けてください。静岡県は県民の皆様あってのものです。そこの舵取りをする重要任務に皆さんは就いたのです。ぜひとも活躍し、静岡県を盛り上げてください〉 このように、「特定業種」を落とすのではなく、ただただ「一緒に頑張る」とだけ言えばいいのである。それにしても本当にオッサンというものは、スピーチの際、目の前にいる人間だけを喜ばせればいいとそこにいない人を貶める。今回の県庁のスピーチにしても、新入職員の中には野菜を売ったり牛を育てたりしている家族や親戚がいただろうに川勝氏は一体なぜその配慮がなかったのか?
失言しない話法を学べ
ここから分かること、そして川勝氏の失敗から学ぶべきは「具体的な属性を出さない」である。川勝氏については過去にも具体的な名前を出したことから炎上したことがある。2021年10月の参議院静岡選挙区補欠選挙でのこと。自身が応援する野党系の山崎真之輔氏の集会で、自民党公認の若林洋平氏について、こう発言したことが物議を醸した。 若林氏は御殿場市長だったが、御殿場市と浜松市を比較したうえで「あちらはコシヒカリしかない。飯だけ食ってそれで農業だと思っている」などと発言。これは御殿場市を揶揄するものであるほか、市民をも揶揄している。さらにはコシヒカリも揶揄している。 浜松は産業が豊富だったり、鰻の養殖が盛んだったりする、と言いたいのかもしれないが、演説にあたっては誰かをくさす必要はないのだ。しかも同じ静岡県内の御殿場市のことだろ? そういった意味で、失言をしたくない皆様は川勝氏の過去のニュース記事はことごとく目を通し、「失言しない話法」を学ぶのも良いだろう。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。 デイリー新潮編集部
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