新外国人「ヘルナンデス」が巨人打線の起爆剤に…日本とつながりの深いメジャーリーガーを思い出した【柴田勲のコラム】
新風が巻き起こった
巨人が首位に立った。2日の西武戦に快勝し、5月15日以来の返り咲きとなった。今季最多タイの14安打で7得点、貧打、貧打と言われたのがウソのようだ。 巨人・原前監督は1位にランクイン【写真特集】プロ野球監督別リーグ優勝回数ランキングベスト10(1990年~2022年)
先発した菅野智之は7回を無失点だったし打線の援護で相手を突き放す。こんな戦い方を待っていた。交流戦が5月28日から始まったが、ソフトバンク、西武にそれぞれ2勝1敗と勝ち越した。いいスタートを切った。 新外国人選手、エリエ・ヘルナンデス外野手、29歳(※)がチームの雰囲気をガラリと変えてくれた。貧打の巨人に新風を巻き起こしたと言っていい。 5月30日のソフトバンク第3戦、5点を追った3回1死後に丸佳浩のタイムリーで1点を返した。なお、一、二塁。ヘルナンデスが左翼席中段へ1号3ランを運んだ。4番の岡本和真も2ランを放って一気に逆転した。 今季の巨人打線は2点を奪うのがやっとのことで貧打が続いていた。ヘルナンデスの一発はその重苦しさを振り払った。
伸び伸びとプレー
打てない。点が取れない。タイムリーが出ない。開幕から阿部慎之助監督はバントを多用し、盗塁で突破口を開こうとした。1死一、三塁からのセーフティースクイズを敢行しては失敗を重ねた。 勝負所で打者にプレッシャーをかける作戦・用兵が結構あった。一言で言えば苦しみながら戦ってきた。打者は振りが鈍く、萎縮している印象が強かった。 巨人の試合、とにかくイライラした。だが、新外国人のヘルナンデスはそんな事情を知らない。無関係だ。スタメンで起用されると伸び伸びとプレーした。 28日、デビューとなったソフトバンク戦で初安打をマークすると、翌29日もしっかり安打を放った。そして30日には殊勲の本塁打だ。 6戦連続でスタメン出場し、ヒットを放ち続けている。2日は猛打賞をマークした。フォローがそれほど大きくないから遠くへ飛ばすタイプではない。でも、スイングがコンパクトで確実性がある。
ヌートバーを思い出す
甘い球を思い切って振っている。特に第1ストライクを狙っている。ボール球を振って投手を助けるタイプではない。 打者は甘い球を見逃してはなにも残らない。巨人の打者たちは一番打ちやすい第1ストライクには手を出さず、追い込まれて難しい球を振りにいっていた。 結果ばかり考えて萎縮して、負の連鎖に陥っていた。そんな中、ヘルナンデスは甘い球を狙った。振らなきゃ事件は起こらない。ハツラツと打席に入っていた。 途中入団の選手に求められる起爆剤の役割を果たした。メジャーでやるにはパワー不足ということだが、3Aでは走攻守がそろった好選手に入る。スリムな体形で見るからに機敏そうだ。守備も悪くない。 昨年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で1番打者として活躍したラーズ・ヌートバー外野手を思い出した。 「全力でプレーする姿がすがすがしい。打撃は思い切りがいい。ファーストストライクを積極的に狙っている。でも大振りはしない。コンパクトな打撃を心がけている」 当時、こんなことを記した。ヘルナンデスとピッタリ重なる。 ヘルナンデスは伸び伸びとプレーすることが大事だということを示したと思う。